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ニトログリセリン

[2024.11.05]

ニトログリセリンは血管平滑筋を直接的に弛緩させる作用を介して、冠動脈(心臓を養う血管)を含む全身の動脈と静脈をともに拡張させます。その結果として、心臓への負担を減らす効果と冠動脈の血流量を増やす効果を介して、狭心症発作の緩解が得られます。

 

狭心症と心筋梗塞の患者さんに対しては、胸痛発作時にニトログリセリン(NG)の舌下錠またはスプレーをお渡しするようにしています。患者さんからよく受ける質問がふたつあります。どんなときに使用すればいいのか、ということがひとつ、ふたつめは胸痛発作のどの時点で用いればいいのか、という質問です。今回はこのふたつの質問にお答えし、その他の注意点についてもご説明したいと思います。

 

  1. どんな時にNGを用いるか?:NGを処方されている患者さんは、過去に狭心症発作の経験があると思います。痛みの程度を問わず、痛みの性質が類似していたら、NG舌下の適応となります。狭心症発作の症状は様々ですが、胸部圧迫感、胸部絞扼感などが典型的な症状です。自分で狭心症発作がどうか迷う時は、ためらわずNGを舌下してください。
  2. NGを用いるタイミングは?:胸痛(症状)のできるだけ早期にNGを舌下して下さい。狭心症発作の時間が長くなれなるほど、発作が緩解しにくくなることがあるため、しばらく経過をみることは避けるべきでしょう。
  3. NGを用いるときの体位は?:NGは血圧低下作用があるため、できたら臥位で、少なくとも座位で用いてください。立位での舌下は血圧低下がより強く表れ、気が遠くなることもあるため、避けてください。
  4. 1回の発作で用いてもいい錠数は?:5分の間隔で2錠までが1回の発作で用いてもよい錠数です。教科書的には3錠までとされていますが、それだけ血圧低下も強くなるため、2錠までが安全域と考えています。
  5. 救急車を呼んだ方がいいタイミングは?:2錠のNGを用いても発作の緩解が得られず、症状が持続あるいは却って悪化している時は、119 callをお願いします。急性心筋梗塞の可能性があるためです。
  6. 狭心症発作の可能性が低い症状は?:ちくちく、あるいは、ずきずきした胸痛、特定の体位で誘発される胸痛(例:前屈みで痛む)、呼吸性に変動する胸痛(例:息を吸う時に痛む)、胸を押したら痛む胸痛などは狭心症の可能性が低い症状です。ネットなどで狭心症の症状として、左肩が痛むことがあるという記述があるようですが、慢性的な肩の痛みはもちろん狭心症ではありません。その他、動悸があって、NGを用いる方もおられましたが、NGはあくまでも狭心症発作に対して有効であって、NGは却って動悸を増悪させる可能性もありますので、使用しないで下さい。

 

私の診療に関しては、患者さんの質問は大歓迎です。患者さんの気がかりを知るきっかけ、自分の知識の見直しにつながり、結果として、診療の質の向上につながるからです。もちろんすぐにお答えできない時もあると思いますが、その際は勉強して、調べて、次回の診察時にお答えしたいと思います。

 

 

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