収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)、どちらが悪い?
“収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)はどちらが大事ですか?(悪さをしますか?)”―これは患者さんからしばしば受ける質問です。敷衍すると、収縮期と拡張期、どちらの血圧が、心血管疾患の発症リスクを高めるか、という内容になります。“どちらも悪さをしますが、収縮期血圧の方がより重要です”と私はお答えしています。
外来血圧を基準に130万人の成人に対して、8年間の経過観察を行ない、心筋梗塞、虚血性脳卒中、脳出血の発症頻度を観察した疫学研究があります。収縮期血圧:133 mmHg、拡張期血圧:78 mmHgを起点にZスコア(1Zスコア=1標準偏差)が増加するごとに、収縮期、拡張期血圧ともに心血管疾患の発症頻度が増加することが図1よりみてとれます。また、その負の効果は収縮期血圧の方が拡張期血圧より大きいことが明らかです。
図1:収縮期血圧、拡張期血圧と心血管疾患の発症頻度
実際の外来診療で収縮期血圧が十分に降圧していて、拡張期血圧がやや高いという患者さんはしばしばおられます(例:50歳 男性 血圧 110/84 mmHg)。このような場合は収縮期血圧を重視して、降圧薬の追加または用量の増量は収縮期血圧の過降圧(症状:ふらふら感、たちくらみ、倦怠感など)を招く可能性が高いため、降圧薬の変更を行わないことにしています。逆に拡張期血圧が正常で、収縮期血圧が高い場合は(ご高齢の方に多いです)、適切な収縮期血圧を目標に、積極的に処方内容の変更を行っています。
参考文献
1.N Engl J Med 2019; 381:243-251