座位時間と健康
現在の私の気がかりなことは、クリニックを開院する前から、予期したこととはいえ、座位ですごす時間が長すぎるということです。水曜日から日曜日の診療日の平均の座位時間は、8時間前後です。自宅からクリニックまでは徒歩5分なので、1日に2回、往復しても3000歩に届くかどうか、というところです。休日は釣りにも行きますが、もともと無精者のため、車から堤防までの距離ができるだけ短い場所を選択してしまうため、歩数は伸びません。磯歩きなどまっぴらごめん、です。
では、なぜ座位で過ごす時間が長すぎることが私の気がかりかというと、1日のうちでの座位時間は、生命予後と密接に関連しているからです。2012年のオーストラリアの研究では、2.81年の経過観察中に何らかの病気で亡くなるリスクが、8時間以上の座位時間の人は4時間未満の人に比べて、有意に高かったのです(8-11時間未満:1.15倍、11時間以上:1.40倍)。また、長い座位時間は心血管疾患の発症率を高めることも知られています。座位時間が長すぎると中性脂肪値を高くする、HDL-コレステロール(いわゆる善玉コレステロール)を低下させる、インスリンに対する体の感受性が低下する=インスリン抵抗性が増す、などの代謝面での悪影響が知られています。
仕事の性質上、どうしても座位時間が長くなってしまう人は、どうしたらいいのでしょうか?軽く息が弾む程度の運動を週に300分以上行うと、長い座位時間の負の効果を打ち消すことができることを、同じくオーストラリアの研究者たちは述べています。
なかなか運動する時間がとれない患者さんの中には、本来の目的地の一つ前の停留所で降りて歩いたり、昼休み中に歩いたり、あるいはジムに通ったりと、いろいろ工夫されている方もおられます。患者さんから教えられることは実際、多いのですが、自分も実践しなけりゃいけないなと思う昨今です。
参考文献
- Arch Intern Med 2012; 172:494-500
- J Am Coll Cardiol. 2019; 73:2062-2072