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池島の大マダイー小雨降る静かな夜にー

[2023.06.14]

誰しも自慢した事がひとつや、ふたつはあるかと思います。少し過去の出来事になりますが、2023年4月下旬に誇りたいことが一つ、私に加わりました。その日の顛末をお話ししましょう。

 

その日は時に小雨がぱらつく、すっきりない空模様でした。“いつでも時間が許す限り釣り”の方針を固めていた私の心はふたつの選択肢の間で揺らいでいました。ふたたび池島へフェリーで渡るか(4月上旬にも釣行)、それとも車横付けポイントでお茶を濁すか、です。4月下旬とはいえ夜はけっこう冷えます。そのうえ、もし、一晩、雨に降られたら、それこそ修業のような釣りになってしまいます。私の気持ちが大きく車横付けポイントに傾きかけたときに、通販の岩虫が大阪からはるばる届いたのです。新鮮で、おっきくて、元気な岩虫たちがケースの中で蠢いていました。そして、彼らはこう私に語りかけていたのです。“おいらはちゃんとした場所、大海原で、後悔のない勝負をしたのさ”、と。

 

池島の北側の堤防で、18時より釣りを開始。潮回りは中潮、干潮:17時3分と翌朝:5時20分、満潮:23時38分。暗くなり始めた頃、湾口の船道に投入していた“かつものはらも”に果敢にアタックする魚があり、堤防にあげた魚は期待どおりのマゴチ:56 Cmでした(図1)。うまくいくときはうまくいくものです。2週間前もこの餌でマゴチが釣れたので、再現性があるという点から察して、少なくともこの海域では“かつものはらも”はマゴチ釣りに有効といえるかもしれません。貴重な発見でした。

図1:マゴチ56Cm

 

20時を少し廻ったところで中型のヘダイ、20時50分にけっこう荒々しい引きを示したチヌ:50 Cmがあがってきました。かろうじて年なしと呼べるサイズで、チヌにデジカメを構えている時でした。後ろの方でなんだか早い回転の音がします。音は堤防の左角付近からで、堤防の上辺とほぼ平行に投げた竿のリールから道糸がどんどん引き出されていくではありませんか?これは大物ばい、というわけで、間髪を入れずに合わせを入れると久々の強烈な引き。これはお友達かも(コロダイのことです)、という想像が頭をよぎります。リールが中途で巻けなくなって、仕方なくドラグを緩めて魚を走らせ、体力消耗をはかります。私は魚とのやりとりの際中は基本的にドラグを締めてたたかいます。その理由は投げ釣りの場合、かけた瞬間、魚と海底の距離はほとんどありません。主導権を相手に与えないために、一刻も早く魚を底から離す必要があります。当然、魚の方が地形を熟知しているため、不用意に走らせるとラインを切られたり、仕掛けが根掛かりしたりするリスクが高まります。よって、できるだけドラグの使用は控えています。少し脱線しました。4-5分ほどして海面に姿を現した魚を見て、驚きました。なぜなら夜目にも赤い魚体だったからです。海面を激しく叩くその姿は、マ、マダイや、と密かに喜ぶ自分。速攻でたも入れして、堤防に横たわったマダイの長寸は72Cmとマダイ部門では2番目の自己記録でした(図2)。眼の縁と尾びれの青が鮮やかです。喜びと感動のあまり堤防上で踊り出したい気分で、実際、少し踊りました。私は釣り番組でいろんな地方のマダイの映像をみていますが、長崎のマダイの魚体が最高に美しい、と思っています。

図2:マダイ72Cm

 

40分後にふたたび大きなあたりがあって、これもなかなか力強い抵抗をみせ、魚は私のお友だち、コロダイ、でした(図3)。昨年の11月以来、5か月ぶりの再会で、お互いに心の中で涙したことはいうまでもありません。コロダイは基本的には夏―秋の魚であり、4月に釣れるのはかなり珍しく、その点からも嬉しい一尾となりました。

図3:お友達(コロダイ) 56 Cm

 

この夜は予報どおりに突風を伴う雨が間欠的に降り、翌日の午前3時からは間断なく振る雨となりましたが、疲れも吹き飛ぶ嬉しい一夜となりました。これも岩虫が私を励ましてくれたおかげです。ありがとう、岩虫くん。帰宅後にマダイと一緒に記念写真を撮りましたが、クーラーの中に上半身1/3を屈曲させて収納していたため、魚の頭が曲がった写真となりました(図4)。マダイは刺身、塩焼き、吸い物、鯛茶飯などで、3日間ほどかかって食べ尽くしました。

図4:マダイと私

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