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高コレステロール血症の新たな内服薬

[2026.06.02]

LDLコレステロール(LDL-C)は冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)、および虚血性脳卒中の強力な危険因子です。高LDL血症に対する薬物治療の第一選択薬はスタチンです(ロスバスタチン、ピタバスタチンなど)。スタチンがLDL-Cを低下させる機序は、下記のとおりです。

肝臓でのLDL--Cの産生低下(スタチンの効果)→肝臓でのLDL受容体数が増加し、血中のLDL-Cをたくさん取りこむ→血中のLDL--Cが低下する。

 

スタチンは心血管疾患の発症または再発予防の効果は高く、たくさんの患者さんに福音をもたらしています。一方、スタチンには克服すべき問題点もあります。一つはスタチン不耐症です。スタチンの副作用:筋症状(筋肉痛、筋力低下)、および肝機能異常により、スタチンの継続投与が困難な状態です。もう一つの問題点は、その患者さんにとって許容できる最大の用量のスタチンを投与してもガイドラインで目標とされるLDL-Cまで低下しない方が一定数おられることです。心筋梗塞の既往歴がある患者さんのLDL-Cの目標値:< 70 mg/dL未満ですが、スタチンの投与にも関わらず、少なくとも50%以上の患者さんでこの目標レベルを達成できていない現状があります。ここでは二つの問題点の解決に繋がるかもしれない新たな薬(未承認の薬も含む)を概説します。

 

  1. ベムべド酸(商品名:ネクセトール):主としてスタチン不耐症に対して、用いられる薬です。作用機序はスタチンに類似しています。肝臓でのLDL-Cの合成を抑制し、肝臓でのLDL-Cの受容体数を増加させて、血中のLDL-Cを低下させます。ベムベド酸は17-28%のLDL-Cの低下作用があります。この効果はスタチンに比べると小さいといえます。スタチン不耐症、またはスタチンの投与を望まない患者さんを対象にした臨床試験では、ベムベド酸はプラセボと比べて、心筋梗塞、冠動脈血行再建などの心血管疾患の発症リスクを13%低下させています。なお、すでにスタチンが投与されている患者さんに対するベムベド酸の併用効果はまだ十分に検証されていません。
  2. オビセトラピブ:すでにスタチンが投与されているにも関わらず、LDL-Cが治療の目標値に届いていない患者さんが対象となるでしょう。まだ日本での保険診療の適応ありません。薬の効果としては、LDL-Cを低下させ、HDLコレステロールを増加させる効果があります。動脈硬化性心血管疾患がある人、ヘテロ型の家族性コレステロール血症の方を対象にした臨床試験では(対象例のうち約90%以上でスタチンが投与されています)、84日後の時点で、約30%のLDL-Cの低下作用を示しました。さらに、4%の患者さんで、LDL-C:< 70 mg/dLを達成しています。
  3. エンリシタイド:PCSK-9阻害薬に分類される薬です。LDL-C受容体の分解に関与するPCSK-9というタンパク質を阻害することにより、分解されるはずだったLDL-Cの受容体が再活用され、LDL-Cを低下させます。PCSK-9阻害薬はスタチン投与例でも50%以上のLDL-Cの低下作用があり、その心血管疾患の再発あるいは発症予防効果も確立しています。ただ、今までは注射薬のみであったことが、投与に際しての難点となっていました。一方、エンリシタイドは内服薬であることが極めて画期的な点です。オビセトラピブと同様に、保険適応はありません。LDL-C:55 mg/dL以上の動脈硬化性心血管疾患の既往がある人、およびLDL-C:70 mg.dL以上の心血管疾患の発症リスクが高い人を対象とした臨床試験では(約96%の例でスタチンが投与されています)、投与後24週の時点で実に57%のLDL-Cの低下効果を示し、注射薬と遜色のない結果でした。その効果に関しては、オビセトラピブに優っているともいえるでしょう。

 

オビセトラピブとエンリシタイドともに実際に心血管疾患の発症、または再発リスクを示すかどうかという点に関しては、今後の臨床試験の結果を待ちたい処です。

 

参考文献

  1. N Engl J Med 2023;388:1353-64
  2. N Engl J Med 2025;393:51-61
  3. N Engl J Med 2026;394:529-39
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