崎戸の大真鯛、スズキ、チヌー投げ釣りー
私は医師を生業としていますが、実は第2本職があって、それは釣りです。中でも投げ釣り部門に注力しています。1月、2月は投げ釣りの休漁期間にあたります(釣りに行っても狙いの魚は釣れません)。その間は遠投かご釣りや投げサビキに挑戦した結果として、望外の結果が得られ(真鯛、チヌ、アコウなど)、充実した2月間でした。
“そろそろ投げ釣りに行かねば”、と心の中で突然に宣言。いつもは3月下旬に始動するのですが、今年は海水温が高いため、チヌが騒ぎだしているかもしれない、という期待と近年、個体数が多くなったヘダイも来てくれるかもしれない、という期待があったためです。
“で、何処にする?”
“それは聖地崎戸でしょう。”と即断。なぜ私にとっての聖地なのかというと、これは重要な点なのですが、粘れば必ず魚を確保できることがひとつ、静寂、速い潮流、崎戸ネコが心を和ませてくれることがふたつめ、そしてたくさんの魚たちとの心に刻まれた記憶のためです(もっとも、魚たちは私との出会いを避けたかったかもしれないです)。
18時より釣り開始。風速はおよそ8mと強風でしたが、30Cm以上の長さの魚のあたりは風による竿先の揺れとほぼ鑑別できるでしょうと楽観視。それは3本めの仕掛けを完了した時でした。右30度の方向に投げたリールからドラグ音が響き、合わせを入れると手応えは十分。護岸の間際でも激しく抵抗した魚はチヌでした。45Cmは超えたな、と思っていましたが、百均のメジャーで計測すると思いのほか大きく、52Cmに達していました(図1)。今年の投げ釣り最初の魚がいきなり年なしのチヌとは。天才かもしれない、と自分で自分を称える私。そうです。人は褒めて育てた方が、間違いなく成長するのです。よって、自分を褒めるしかありません。
図1:年なしチヌ
潮は左から右へ錘が流されない程度の速度で快調に流れています。この海峡筋では北から南への流れこそが、釣れる潮なのです。例年、この時期、崎戸の海峡筋ではフグは沈黙し、当りがあれば本命の魚というはずでしたが、今夜はやけにフグが活発です。思うにフグは最強の魚です。釣れても海に戻すしかないし、敢えてフグを食べようとする決死の魚もいないでしょうからね。
フグと戯れ、時刻を確認すると20時。今から22時までが最初の勝負の時間帯です。まめに打ち返すもまめにフグがかかってきます。おまけに、これは重いとおもって引き上げるとそれは餌木と餌木に絡まった浮き仕掛けなのでした。とりあえず、空のプラスチックボックスに収納。背後に構える崎戸ネコもしょうもな、といっています。フグはやれないので、餌のひとつであるバナメイエビをあげて、ネコの歓心を買うことができました。ネコに一方的に喋りかけていた21時頃でした。突然に右60度の方向に投げていた竿が跳ね上がり、隣の竿と交差しました。これは大物ばい、というわけで、先ほどと同程度の手応えで引き寄せた海面直下の魚は予想のチヌではなく、魚体が長い魚。これはサメ?、と一瞬、落胆しましたが、ヘッドライトで銀色に輝く鱗は、ス、スズキや。スズキ得意のエラ洗い、跳躍をさせないように竿を適当に操作して、タモ枠から魚体をはみだしながら、あげた魚はやはりスズキでした(図2)。確実に自己記録を超えており、やった、やったと心の中で叫び、もう帰ってもよかばい、と自分に帰還を許可しました。なお、スズキは完全に予想外の魚ではありませんでした。スズキを虫餌で釣るうえでは、底から少し離すことが推奨されています。この時、針の補強にポリラートを用いていて、ポリラートはハリス部分のフロロカーボンより軽いため、虫餌が底より少し離れて漂っていたはず、と考えられたからです。
図2:77Cmのスズキさん。
本当のドラマはここからであることを私は知りませんでした。それはスズキの長さを計測している時、正面の根際に投げ込んでいた仕掛けの道糸が疾走しています。これは何?合わせが決まって、巻きにかかると最強クラスの引き。まさか、エイ?いや、エイの引きとは違うちゃんとした魚の手応え(ごめんな、エイ)。お友達のコロダイ?いや、いくら水温が高いといってもコロちゃんが釣れる時期とはずれすぎている。チヌ様にしては、力が強すぎる。自問自答していると、かけあがりで巻けなくなりました。敗北するかもしれない、という懸念がよぎります。しかし、この竿にはこの日の最強仕掛けをセットしていました。道糸:ナイロン12号、ハリス:フロロカーボン14号です。夜投げの大物釣りでは仕掛けの太さをあまり気にしなくていい点が長所です。うりゃ、とばかりに、再度、渾身の力で巻きにかかると、かけあがりから魚がはずれ、白色の腹部をみせながら上がってきた魚は大真鯛。計測:75 Cm, 5.2Kg(図3)。信じられませんでした。この釣り場で50Cm台の真鯛が来ることは確認ずみでしたが、まさか、まさか、でした。なぜなら、この海域の水深は浅く、満潮時でもおそらく4-5m前後です。大真鯛は深場で(15-20m)という常識を覆す1匹でもありました。常識は疑え、ですね。私の狂喜と暴れる魚に恐れをなしたのか、ネコも遠くに去っていきました。まだまだ釣れそうでしたが、クーラーが満腹になってしまい、かつ、食材も十分すぎるほどでしたので、釣り終了。意気揚々と自宅に帰還した私を迎えたのは、夜遊びはいい加減にしな、といいたげな表情のネコ達、空と天でした。
図3:真鯛 75Cm
最後に妻が作った魚料理の紹介です。図4は3種のお造りです。真鯛はもちろん美味なのですが、スズキはもっちり、チヌはしっとり(透明感も印象的でした)していて、最高じゃん、でした。河口域は微妙かもしれませんが、きれいな海で釣れたスズキ、チヌはおいしいのです。魚は季節により味が変わりますが、釣れた場所も極めて大切です。是非、お試しあれ、です。図5は寿司、です。あっという間にたいらげました。寿司はネタの鮮度とすし飯とのバランスが決め手です。寿司屋さんのような技巧を加えなくても十分においしいです。これも是非、お試しあれ。図6はポアレ。ソースと薬味が最高で、厚い身とマッチしていました。もう、おなかいっぱいです。翌々日の料理はまず昆布締めです(図7)。昆布締めは身が適度にしまり、昆布の香りもあって、私は生の刺身とは別に必ず作ってもらっています。ほーい、ほーい、の擬音語です。最後に図8は真鯛の胸鰭周囲の塩焼きです。体部よりも歯ごたえがあって(肉質)、かめば噛むほどに、口腔内に鯛の味わいが広がって、酒がどんどんすすんでしまいました。
図4:3種のお造り
図5:寿司ざんまい
図6:ポアレのアルプス山脈
図7:3種の昆布締め、美しい
図8:定番、マダイの塩焼き
