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パルスオキシメーター:正しい測定方法と評価について

[2022.04.25]

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに人口に膾炙された医療器具として、パルスオキシメーターがあります。家庭用に購入された方も少なからずおられるようです。赤血球の中にあるヘモグロビンは酸素と結合し、循環によって各組織に酸素を運搬し、酸素を与える重要な働きをしています。パルスオキシメーターは酸素化ヘモグロビンと非酸素化ヘモグロビンの赤色光と赤外線に対する吸収率の差異を利用して、酸素と結合したヘモグロビンの比率(SpO2)を計測する器具です。[SpO2の計算式:酸素化ヘモグロビン/すべてのヘモグロビン×100(%)]。中等度以上の呼吸不全および心不全、肺塞栓症などでは低酸素血症となるため、SpO2は低下します。正常値は96%以上で、93%以下は酸素投与が考慮されるレベルで、90%未満は危険な低酸素血症と考えられます。

 

息切れ、呼吸困難などの症状を欠く患者さんに対しても、SpO2は数字で表されるため、一見、科学的であり、COVID-19患者さんの在宅、ホテル療養でのモニタリングとして有用と考えられ、普及したものと思います。一方、非医療従事者の人が自分でSpO2を測定する場合、幾つかの注意点があります。

 

SpO2測定での注意点

  1. 脈波が正しく表示されているかを確かめましょう。脈波とは動脈の拍動のことで、パルスオキシメーターの表示窓の下端に示される反復する山形の波です(図1)。脈波がきちんと記録されていて、初めてそのSpO2の値は信頼できます。山が平坦だったり、山がでたり引っ込んだりしている場合のSpO2の値は信頼できません。なお、機種によっては、脈波の強さが棒状のグラフで表示されるタイプもあり(図2)、その場合は心拍ごとに上下が明瞭に表示されれば、正確に計測されていると考えていいでしょう。
  2. 脈波がはっきりとしない場合の原因は、血圧が低い、手指が冷たくなっている、測定している指が計測に向いていないなど考えられます。指が冷たい場合は、温めてから測り直してください。一般的に測定する指は示指、または中指とされていますが、脈波がうまく出ない時は他方(右手だったら、、左手)の指に変え、それでもうまくいかないときは、薬指や小指を用いてみて下さい。
  3. SpO2を観察する時間は30秒-60秒とし、その間のもっとも高頻度に認められた値を記録しましょう。SpO2はしばしば変動するためです。
  4. 測定する指のマニキュアは落としてください。光の吸収率に影響するかもしれないためです。
  5. 安静時に測定しましょう。
  6. 一方、軽い労作(排尿後や食事など)の後のSpO2が安静時のSpO2に比べて、3%以上の低下を認めたら、それは極めて重要なことです。なぜなら、呼吸機能または心機能の余力がなくなりつつあることを示しているかもしれないためです。

 

在宅(ホテル)療養者のモニタリングを行う時に、通常の症状や発熱の有無の聞き取りに比べて、SpO2のモニタリングを加えたほうが、療養者の予後を改善するか、という問題に関しては、残念ながら十分には検証されていません。最近のNew England Journal of Medicineに寄せられたレターによると、Covid-19自宅療養者に対する“症状を中心とするモニタリング+SpO2モニタリング”と“症状を中心とするモニタリングのみ”の比較では、発症後30日間の死亡率(0.8% vs. 0.5%)、入院率(7.0% vs. 6.8%)ともに差異を認めていませんでした。より大規模な臨床研究が待たれるところでしょう。

 

参考文献

  1. Ann Am Thorac Soc. 2020 Sep;17(9):1040-1046.
  2. DOI: 10.1056/NEJMc2201541

 

図1

 

図2

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