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ダニと感染症

[2019.05.30]

2019年5月15日に重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者さんが東京都内で初めて確認されたことが報道されました。そして、その患者さんは長崎県内を旅行し、その際にマダニに噛まれ感染したものと考えられています。SFTSは発熱、倦怠感、嘔吐、下痢などの消化器症状、血小板と白血球の減少が特徴で、新興ウイルス感染症注1)の一つです。肝機能障害の合併も多いとされています。SFTSの発症患者数は地域差があり、主として西日本に集中しています。マダニが活動する春から秋にかけて発症する方が多く、好発年齢は中高年です。現在の処、有効な治療法は定まっていませんが、新型あるいは再興型インフルエンザウイルスの適応があるファビピラビルのSFTSに対する有効性と安全性を調べる臨床治験が進行中です。国立感染症研究所がweb上に公開している成績では、2013年の死亡率:35%より2018年の死亡率:5.2%と著明に改善しています(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html).

 

人に対してダニはウイルスだけではなく、リケッチア、細菌などのさまざまな病原体を媒介することが知られています。代表的なマダニ媒介感染症であるツツガムシ病や日本紅斑熱はリケッチアが、ライム病はスピロヘータという細菌が原因微生物です。ツツガムシ病はツツガムシというダニの幼虫が、日本紅斑熱はマダニが感染源となります。ともに発熱と特徴的な皮疹(痛みや痒みはありません)があるため、疑った医師はダニの刺し口を探すことになります。すぐには鑑別にあがらない病気とも思うので、まずは疑い、疑った段階で治療を開始することが重要と成書には書かれています。ライム病はマダニ咬傷により感染し、インフルエンザ様の症状に加えて、遊走性紅斑が特徴的で、神経症状や心症状などの多臓器に障害を及ぼすことがあります。

 

ダニ感染症の予防は野山、藪でダニにかまれないようにすることです。厚生労働省のホームぺ―ジに掲示しているポスターに、予防法と噛まれた時の対処方法が簡潔に記載されています。このブログに貼りつけましたので、御参考にしてください。

 

注1:国立感染症研究所のホームページでは、新興感染症を” 最近新しく認知され、局地的にあるいは国際的に公衆衛生上の問題となる感染症”としています。鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、AIDS、日本紅斑熱などが新興感染症に含まれています。

 

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