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ビタミンDは骨の健康を守れるのか?

[2019.09.10]

経験的に有効と信じられていた治療、あるいは理論的に有効と考えられた治療が、臨床試験でその効果が疑問視、あるいは否定されることは時にあります。特に医者はそれまで信じていた経験則が揺らいだ時、衝撃を受けます。今回はビタミンDのサプリメントの効果に関する論文で、意外な結論を目にしましたので、御紹介したいと思います。論文は臨床医学の領域で最も信頼性の高い雑誌のひとつであるJAMAに掲載されています。

 

ビタミンDは腸管からのカルシウムとリンの吸収を促し、骨密度を増加させることによって骨強度を増し、骨折のリスクを減らすと考えられています。そこで、著者らはビタミンDの欠乏がなく、かつ、骨粗しょう症の合併を認めない311名 (年齢:55歳~70歳)の対象者を、ビタミンDのサプリメントを低用量服用群(400 IU/日)、中用量服用群(4000 IU/日)、高用量服用群(10000 IU/日)の3群に分け、CT検査で評価した骨密度と骨強度の変化を比較しています。経過観察期間は約3年で、もちろん、著者らは高用量のビタミンDを服用した対象者の骨密度が最も改善されると考えていたのです。

 

結果は当初の期待に反するものでした。骨密度は3群ともに経年的に低下していきました。一方、試験終了時点での高用量服用群、中用量服用群の骨密度は低用量服用群の骨密度に比べて、明らかな低値を示したのです。骨の構築は骨吸収と骨形成のバランスによって、成り立っています。著者らは高用量のビタミンDがむしろ骨吸収を促進し、骨密度を低下させる可能性を指摘しています。また、論文の中で強調されていることですが、高用量のビタミンDが骨の健康にとって有害かどうかに関しては、別の臨床試験を計画する必要があるとしています。この臨床試験が骨粗しょう症の患者さんを対象に行われているわけではない点にも注意する必要があります。

 

GoogleでビタミンDサプリメントと検索するとさまざまな商品がヒットしてきます。かりにビタミンDのサプリメントの購入を考えるとすると、一個:1000IU=25μg以下の製品を1日一個が安全かもしれません。

 

参考文献

JAMA 2019; 322: 736 - 745

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