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中性脂肪をさげるメリットは?ー2型糖尿病での検討ー

[2022.12.06]

LDLコレステロールを低下させることにより、急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発症頻度および再発頻度が低下することは、たくさんの臨床試験により確かめられています。そのため、心筋梗塞を発症した方は、LDLコレステロール値の目標値 < 70 mg/dLと厳格にコントロールすることが強く推奨されています。

 

また、中性脂肪の高い人が心血管疾患の発症頻度が高くなることも知られています。しかしながら、中性脂肪を低下させることによって、心血管疾患の発症頻度が低下するか?、という問題に関しては、一致した結論が得られていません。

 

心血管疾患の発症リスクが高い2型糖尿病に加えて200-499 mg/dLの高中性脂肪血症を伴っている患者さんに対して、ぺマフィブラートの臨床効果を検討した研究を御紹介します。対象は10,497人で、ぺマフィブラート群:5240人とプラセボ(偽薬)群:5257名の2群に分けられています。主要な評価項目は経過観察中の心血管疾患(心筋梗塞+虚血性脳卒中+冠動脈血行再建+心血管死)の発症頻度です。

 

ぺマフィブラートはプラセボに比べて、26.2%の中性脂肪を低下させる効果を示しました。しかしながら、この効果は患者さんに対する良好な効果には結びつきませんでした。先に述べた心血管疾患の発症は、ぺマフィブラート群:572人(10.9%)、プラセボ群:560人(10.7%)と差異を認めなかったからです。ただ、ぺマフィブラートは非アルコール性の脂肪肝の頻度を低下させました(3.0% vs. 3.8%)。

 

ぺマフィブラート投与によりLDLコレステロールが治療前に比べて増加しており(治療前:79mg/dL→91 mg/dL)、そのため中性脂肪を低下させても患者さんの予後を改善することができなかったのではないか、と著者らは述べています。中性脂肪は食事の影響を強く受けます。1日の摂取カロリーが過大だったり、炭水化物をたくさん摂りすぎると、容易に中性脂肪の値は高くなります。事実、この研究での対象患者さんの肥満度指数(BMI):32.0Kg/m2と肥満した方が多かったのです。軽症から中等症の高中性脂肪血症(200-499 g/dL)の人に対しては、いきなり薬物治療を行う利点はあまりなく、まずは食事と運動で経過をみる方法がよいと思います。高中性脂肪血症と高LDLコレステロール血症を伴っている人に対しては、高LDL血症を薬物治療のターゲットにしたほうがよい、というのが私見です。

 

参考文献

N Engl J Med 2022; 387: 1923-1934.

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