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冬は心臓病の敵

[2020.12.22]

冬季は心臓病を新たに発症するリスクが高くなります。また、もともとの心臓病が悪化するリスクも高めます。高血圧の患者さんでは、夏の血圧に比べて、寒くなってきてからの血圧が数mmHgほど高くなる傾向があることは、ふだんの外来診療で気づくことのひとつです。そのため、冬季は降圧薬の用量の増量や別種類の降圧薬の追加が必要となる場合がしばしばあります。寒くなると心臓病を発症しやすくなる、あるいは悪化しやすくなる理由と対処方法を考えてみます。

 

殆どすべて心臓病、血管疾患が冬季には増加します。代表的な疾患は急性心筋梗塞、脳血管疾患、大動脈解離(大動脈の壁がさける病気です)、大動脈瘤破裂(こぶ状に膨らんだ大動脈が破れる病気です)、頻脈性不整脈(心房細動など)、および心不全です。例えば心筋梗塞の発症数に関しては、冬季の発症数は夏季のそれに比べて、53%も増加するという報告があります。

 

季節の中でも、心臓の仕事量(=心拍数×上の血圧)が冬季に増大しやすいことが、冬季に心血管病が多くなる理由の一つです。数mmHg程度の血圧の上昇でも心臓の負担を増大させ、血管へのストレスを増す結果として、心筋梗塞や脳血管障害の発症のリスクを高めますし、一方、もともと心機能が低下している心臓にとっては、心不全発症の誘因となりえます。ふたつめは血圧の急激な上昇がおこりやすいことです。暖かい室外から戸外へ、入浴前後、起床後などの場面では、低気温が交感神経などを活性化させ、血圧、心拍数を急激に上昇させえます。急な血圧上昇は大動脈解離や大動脈瘤破裂の引き金をひくことにもなりかねません。みっつめは肺炎などの呼吸器感染症が冬季には増えることです。呼吸器感染症は肺と心臓の仕事量を増大させ、重症肺炎では低酸素血症による多臓器の障害をもたらします。また、動脈硬化巣での炎症を活発化させることも示唆されています。インフルエンザ発症後1週間以内は他の時期に比べて心筋梗塞の発症リスクが6倍ほど高くなることは、以前にもご紹介いたしました。

 

とにかく急激な気温の変化への曝露を避けることが、冬季の心血管病の予防には最も重要と思います。新型コロナウイルス感染症が蔓延しつつある現在、換気と暖気を両立させることは困難ですが、いくつか予防策を述べてみます。

  1. 本当はスローライフが望ましい、と思います。残念ながら、わたし自身、それを実践できた記憶はありません。それでも、起きて、朝食をすっとばして、慌ただしく出勤、は避けた方がいいでしょう。胸が痛くなるかもしれません。少なくとも朝食はスキップせず、暖かい飲み物と軽食をとりましょう。
  2. 換気している間は普段より厚着にしましょう。
  3. 起床後間もない時間帯でのウォーキング、ジョギングは避けましょう。冬季は午前10時以降がいいかと思います。できたら気温10度以上での運動がいいでしょう。
  4. 浴室を温めてから入浴しましょう。脱衣場を温めることは困難な家庭が多いと思いますので、少なくとも下着、パジャマなどは予めあたためておいた方がいいでしょう。
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