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患者さんのための検査値の見方

[2022.03.01]

特定検診、事業所が行う検診、および通院中の方では医療機関で定期的に行う検査などで、みなさんは検査結果(採血の結果)を手にする機会が多いことと思います。検診結果の判定としては、医療機関の受診が必要(精査が必要、治療が必要など)、または経過観察が必要というコメントをもらった経験がある人も少なくないでしょう。でも、現在の処、症状はないし、日常生活に困っているわけでもなく、いまひとつ自分のことのようには思えない、という方もおられるでしょう。

 

高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、検査結果には反映される一方で、もともと症状に乏しい病気です。しかしながら、治療介入(食事、運動、薬などを)を怠ると、動脈硬化性の心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞など)を発症リスクが増大してしまいます。ここで私が強調したいこと。それは、みなさんが手にする検査結果は、自分の健康状態を自分で知るための貴重な資料であり、自分の健康状態を自分で把握することができれば、受診のきっかけになりえますし、その先に必要かもしれない治療に対する理解も深まるでしょう。ここでは検査結果、とくに異常値の見方について、ご説明したいと思います。

 

高血圧:血圧は家庭血圧と診察室での血圧により、4つのタイプに分けることができます(図1参照)。家庭血圧の閾値は135/85 mmHgで、診察室血圧の閾値は140/90 mmHgです。このうち仮面高血圧(家庭血圧は高値、診察室血圧は正常)と白衣高血圧(家庭血圧は正常、診察室血圧は高値)に関しては、家庭血圧を測定しないと知ることができません。薬物治療も含めた治療介入が必要な血圧のタイプは、仮面高血圧と持続性高血圧(家庭でも診察室でも血圧が高い)です。白衣高血圧は生活習慣の是正と定期的な経過観察は必要ですが、薬物治療は基本的には不要です。自分の血圧のタイプを知り、適切な治療を受けるためにも家庭血圧の測定をおすすめしたいと思います。

 

糖尿病:糖尿病の診断は血糖値とヘモグロビンA1C(HbA1C:過去1-2か月の平均血糖値を反映する指標です)の両面から考えます。

  • 空腹時血糖:空腹時の血糖値とは朝、食事をする前の血糖値のことです。126 mg/dL以上は糖尿病型で、110 mg/dL未満が正常型です。空腹時血糖値:110~125 mg/dLはどちらの型にも属さない境界型(いわゆるグレーゾーン)です。
  • 随時血糖値:朝食後に測定したすべての血糖値は随時血糖値に属すると考えていいでしょう。随時血糖値:200mg/dL以上が糖尿病型で、正常型は140 mg/dL未満です。140-199 mg/dlは境界型となります。なお、境界型では将来、糖尿病を発症するリスクが正常型に比べて高くなるため、定期的な血糖値とHbA1Cのチェック、および食事に対する注意などが必要です。
  • ヘモグロビンA1C(HbA1C):5%以上が糖尿病型となります。6.0%以上の方に関しては、糖尿病や境界型の人もかなり混在してくると考え、検査や治療の計画を私は立てるようにしています(3-6月ごとの採血など)。

 

脂質異常症:LDLコレステロール、HDLコレステロール、および中性脂肪の3項目から評価し、ひとつでも下記に示す異常値であれば、脂質異常症と診断されます。

  • LDLコレステロール(LDL-C)値:140 mg/dL以上であれば、高LDLコレステロール血症です。高いLDL-コレステロールは脳梗塞や心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症リスクを高めます。特に心筋梗塞の関しては、LDLコレステロールが高ければ高いほど、その発症リスクは直線的に高まります。
  • HDL-コレステロール(HDL-C)値:40mg/dL未満が低HDL血症です。HDL-コレステロールは血管壁に貯留したコレステロールを肝臓へ戻す働きがあり、抗動脈硬化作用があることから善玉コレステロールとも呼ばれています。すなわち、HDLコレステロールが低いと動脈硬化性の心血管疾患の発症リスクが高くなります。なお、近年の研究ではHDLコレステロールが異常に高い場合も、心血管疾患の発症リスクが高くなることが分かってきました。
  • 中性脂肪値(TG値):空腹時の中性脂肪値:150mg/dL以上、非空腹時の中性脂肪値:175mg/dL以上が高中性脂肪血症となります。中性脂肪はLDLコレステロールほどではありませんが、やはり動脈硬化との関りがあります。中性脂肪は食事の影響を強く受けるため、中性脂肪の高い方は食事の見直し(炭水化物系を少なくするなど)が必須です。最近の象徴的な経験では常時、中性脂肪が500mg/dLを超えていた方がおられました。その方は毎日、缶ビール(350mL)1缶と焼酎1-2合を飲酒していたのですが、自発的な禁酒により(つらかったこととお察しします)、90mg/dLまで低下しました。なお、中性脂肪:1000㎎/dL以上では急性膵炎発症のリスクが高くなります。

 

腎機能:腎臓は高血圧や糖尿病により障害されやすい臓器です。また、腎機能の低下そのものが動脈硬化性疾患の発症と深く関わってきます。腎機能は換算糸球体ろ過量(eGFR)とタンパク尿の有無により評価します。

  • 換算糸球体ろ過量(eGFR):換算糸球体ろ過量は腎臓が老廃物(生体にとって不要、あるいは有害な物質)を排泄できる能力を示します。換算糸球体ろ過量:60mL/min/1.73m2未満は腎機能の低下の指標の一つです。
  • タンパク尿:検診では試験紙法によりタンパク尿を評価します。1+以上では再検査する必要があり、その際は安静時の尿、すなわち自宅で早朝の尿を採取して頂き、調べるやり方が確実です。労作によってタンパク尿がでる良性のタンパク尿もあるいためです。糖尿病は特に腎機能障害をおこしやすいため、その早期発見のために微量なタンパク尿の出現を知る必要がるため(試験紙法ではマイナスとなりえるタンパク尿)、定期的に尿中のアルブミン量を定量しています。微量アルブミン尿は30-299 mg/gCrと定められています。

 

みなさんの検査値はどうでしたか?検査結果の異常値の要約を図2にも示しました。みなさんのご参考になれば幸いです。

 

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