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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトライン2

[2020.03.03]

新型コロナウイルス感染症のアウトラインを2月4日に書きました。その頃に比べて、日本でも市中感染が広がりをみせ、マスクの払底、コンサートや演劇の自粛、プロスポーツの無観客試合、および小中学校・高校の春休みまでの休校要請など日常生活にも深刻な影響を及ぼしています。主として中国からの報告を基礎に、この1月の間に新たに明らかになったことを中心に述べたいと思います。

 

ウイルスと感染症の名称:新型コロナウイルスはSARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)という名称が与えられました。また、SRAS-CoV-2が原因である新型コロナウイルス感染症には、COVID-19 (coronavirus disease 2019)という公式名称が与えられました。

 

性差:Guanらは遺伝子診断でCOVID-19と診断された人のうち、58.1%が男性と男性に多い傾向を報告しています。

 

年齢:30歳から79歳の間に87%の患者さんが含まれます。9歳以下:1%、10歳~19歳:1%、20~29歳:8%、80歳以上:3%の頻度となっています。

 

潜伏期間:潜伏期間は1日―14日で、その中央値は5~6日です。最長の潜伏期間を24日とする報告もあります。潜伏期間の感染者、あるいは不顕性感染者(感染しているけれども症状がない人)でも他の人に感染させるリスクがあることは特徴の一つです。

 

感染力:ひとりの人が何人の人に感染を起こしうるかという指標:R0=2~3人とされています。また、発病した人と不顕性感染者の間で、鼻咽頭でのウイルス量に差異はないという報告があります。同じコロナウイルス感染症であるSARSとMERSに比べて、致死率は低いのですが、感染力が強いため、多くの方が亡くなる結果となっています。

重症化率:重症(呼吸困難、呼吸数:30回/分以上、酸素飽和度:93%以下、1日~2日での肺炎像の50%を超す拡大など)、最重症(呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器不全)の頻度はそれぞれ、14%と5%でした。

 

致死率:中国疾病予防管理センターの報告では、致死率:2.3%(1023/44672)でした。日本国内で感染した人は274名で、うち6名:2.2%の方が亡くなっています(2020年3月3日現在)。中国の感染者では、70~79歳の致死率:8.0%、80歳以上の致死率:14.8%と御高齢の方が亡くなるリスクが高いといえます。また、もともと心血管疾患を持っている患者:10.5%、糖尿病患者:7.3%、高血圧患者:6.0%と高い死亡率を示しています。

 

医療従事者への感染:医療従事者への感染率:3.8%でしたが、武漢市では63%と驚くほどの高頻度でした。このことは多数のCOVID-19の患者さんを診療しなければならない状況に追い込まれたとき、極めて高率に院内感染が発生することを示唆しているものと思われます。

 

診断に関する私見:疾患を問わず、治療の鉄則は早期診断と早期治療です。一方、日本の現状はインフルエンザのように疑いがある人を広く検査できる体制にはなっていません。したがって、確度の高い人を保健所に連絡し、遺伝子診断(PCR)をお願いすることになるでしょう。では、確度の高い人をどのように見分けるのか?、が問題です。発熱と咳に加えて呼吸困難がある人、または、両肺にわたる肺炎像を認める人は最初から疑う必要があるように思います。さらに上気道炎と考え治療しても発熱が持続する人、咳が増悪する人、息切れ・呼吸困難を合併してきた人も検査を行うべきではないかと思います。今後、検査の体制が強化され、検査を行う上での敷居がより低くなってほしい、と思っています。

 

参考文献

  1. JAMA 2020 Feb 24. doi: 10.1001/jama.2020.2648. [Epub ahead of print]
  2. N Engl J Med 2020 Feb 28. doi: 10.1056/NEJMoa2002032. [Epub ahead of print]
  3. N Engl J Med 2020 Feb 19. doi: 10.1056/NEJMc2001737. [Epub ahead of print]
  4. JAMA 2020 Feb 28. doi: 10.1001/jama.2020.3072. [Epub ahead of print]
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