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禁煙、体重が増えても大丈夫?

[2021.01.02]

あけましておめでとうございます。年頭に目標や誓いを立てる人は多いかと思います。禁煙の誓いもそのひとつではないでしょうか?煙草は万病の元です。長期間の喫煙習慣は、間違いなく心血管疾患、肺癌を始めとする悪性腫瘍、および肺気腫などの呼吸器疾患と密接に関係しています。百害あって一利なし、といえます。

 

一方、禁煙すると体重が増えました、と話す方は少なくありません。禁煙後の体重増加は生活習慣病を発症させたり、あるいは増悪させたりして、かえって健康面での悪影響があるのではないか、と心配する向きもあります。今回は禁煙後の体重増加と糖尿病の発症リスク、心血管病による死亡リスク、および何らなの病気で亡くなるリスクを検討した論文を御紹介しましょう。

 

糖尿病の発症リスク:喫煙者に比べて、禁煙者では糖尿病の発症リスクは一過性に増えます。特に10Kg以上の体重増加を認めた禁煙者では、喫煙者に比べて1.59倍の発症リスクを示しました。体重の増加と糖尿病の発症にはやはり密接な関連があるようです。禁煙後も体重増加を認めなかった場合は、糖尿病の発症リスクは増大しませんでした。全体として禁煙後に糖尿病を発症するリスクは禁煙後5-7年でピークに達し、その後、なだらかに低下していきます。とはいえ、禁煙後は毎日、体重を計って、体重が増えないように食事量を調整したり、運動を取り入れたりする試みが大切なことはいうまでもありません。

 

心血管疾患による死亡リスク:禁煙をきっかけに肥満や糖尿病を発症するリスクが高くなるということは、禁煙が心血管疾患による死亡をむしろ増やすのではないか、と危惧されます。しかしながら、その危惧は杞憂です。体重増加の程度に関わらず、禁煙は心血管病による死亡を確実に低下させたのです。心血管病による死亡を低下させる割合は、体重増加がなかった群:31%, 体重増加0.1~5.0Kgの群:75%, 体重増加5.1~10.0Kgの群:75%, 10Kgを超える体重増加群:67%でした。50%死亡リスクが減るということは、具体的には喫煙により100人の方が亡くなるとすると禁煙により50人に低下しうるということを意味します。

 

何らかの病気で亡くなるリスク:喫煙者に比べて、体重増加の程度を問わず、禁煙者は何らかの病気による死亡も確実に低下させました。死因の詳細は述べられていませんが、おそらく癌死や呼吸器家系の病気による死亡も減少させたものと推測されます。注目したい点は死亡リスクの低減効果に関して、体重が増加した方では、禁煙後5-10年でプラトーに達しますが(例えば15年後のリスクの低減効果と5-10年でのリスクの低減効果はほぼ同等ということ)、体重が増加しなかった方ではリスク低減効果がその後も維持される(年を追うごとにリスクが減少していくこと)、ということです。

 

喫煙者に比べて、禁煙により体重増加や一過性に糖尿病発症リスクが増大する面はありますが、心血管病および何らかの病気で亡くなるリスクを確実に減らすことから、禁煙による健康上のメリットははかりしれない、といえるでしょう。

 

長年の喫煙によるニコチン依存症はなかなか個人の意思の力だけでは克服できない面があります。図はニコチン依存症の有無を知るためのチェックリストを示しており、5点以上はニコチン依存症と考えられています。私たちは禁煙の手助けができればと思い、昨年末より禁煙外来を始めましたので、禁煙に挑戦したいと思う方はご相談ください。

 

参考文献

 N Engl J Med 2018; 379:623-632

 

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