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免疫能を高めるためには?

[2020.04.14]

感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化しやすい、あるいは亡くなるリスクが高い人は、高齢者、および糖尿病、高血圧、心臓病などの持病をお持ちの方です。特に高齢者や糖尿病患者さんでは、新型コロナウイルスに対する免疫反応が低下していることが、重症化しやすい原因のひとつと考えられます。今回は免疫の仕組みと免疫能を高める方法について、考えてみました。

 

新型コロナウイルス感染症患者のうち、人工呼吸器、あるいはECMOを要するほどの重症の呼吸不全に至る頻度は5%前後であることが知られています。人工呼吸器は自力呼吸では適切な酸素化が得られない方に対して、呼吸を補助すると同時に高濃度の酸素を投与することにより酸素化を達成しようとする機械です。ECMOは体外に置かれた人工肺と血液循環用のポンプを組み合わせた機械で、呼吸と循環の強力なサポートが可能なため、重症呼吸不全の他に急性心筋梗塞や心筋炎による心原性ショックの患者さんも治療適応となります。ともに急性疾患の患者さん対して、用いるべき医療器具、というのが私の見解です。

 

COVID-19による重症呼吸不全の患者さんに対する人工呼吸器またはECMOの主たる治療目的は、自力で回復できるまでの時間を生み出すこと、です。なぜなら新型コロナウイルスに対する特異的な抗ウイルス薬がない現在、自身の免疫(病原体を排除するしくみ)がウイルスを克服することに期待するしかないためです。そして、免疫がウイルスを排除できるレベルまで到達するためには、時間が必要だからです。

 

図に示しますように免疫には自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫はマクロファージなどの食細胞が中心的な役割を果たし、体内に侵入してきたウイルスや細菌を即座に攻撃します。さらに、病原体の特徴を食細胞のひとつである樹状細胞がリンパ球に伝え、その病原体に特異的な抗体を産生したり、病原体が感染した細胞を死滅させたりします。これが獲得免疫です。自然免疫は病原体に対して非特異的に作用しますが、獲得免疫は病原体に対して特異的な反応を示します。今までであったことのない病原体に対して、獲得免疫が十分な攻撃態勢を整えるためには時間を要し、また、個人差もあります。ワクチンは目的の病原体に対する獲得免疫を誘導する方法です。

(https://healthcare.hankyu-hanshin.co.jp/welltokk/backnumber/vol05/wellness/より引用)

 

免疫力を高めるにはどうしたらいいのでしょうか?講談社ブルーバックス“宮坂正之著 免疫力を強くする”の第8章に私たちができる免疫を強める方法が記述されています。著者がすすめる方法、注意点を箇条書きに引用してみます。

  1. ウォーキング:からだの中の血流とリンパ流がよくなるため。
  2. 食事はゆっくり食べる。“食べてすぐ寝ると老化がすすむ”とのこと。
  3. 過食は禁物。バランスが良い食事をとる。
  4. 過剰なストレスをさける。
  5. “ストレスが健康に悪い影響を与える”などとくよくよ考えすぎない。ストレスがあり、くよくよと考えすぎるひとは、死亡リスクが高まるそうです。大らかに生きるということでしょうか?
  6. 睡眠時間の確保。6~8時間が適度と思います。

 

最後に免疫力を高める食品やサプリの効果に関しては、著者は極めて懐疑的な見解です。

これらの食品、サプリは必ずしも安価ではないため、お金がもったいないな、と私などは思ってしまいます。

 

参考

宮坂昌之:“免疫力を強くする”のウソ・ホント. 宮坂昌之著.免疫力を強くする. 講談社:pp259 – 281, 2019

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