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むかしの本屋さん

[2021.10.26]

ずっと以前の話しです。私が中高校生の頃、バス停から自宅までの間に小さな本屋さんがありました。”わかば書店”という店名でした。むかしは現在とは異なり、小さな街の本屋さんが市内のあちこちに点在していたように思います。帰り道、“わかば書店”に立ち寄り、文庫本を立ち読みすることが私の日課でした。200-300ページほどの本なら、数日で読破することができました。その書店はご夫婦で営んでいて、、連日のようにやってくる自分を注意することもなく、好きにさせてくれました。

 

現在は本屋に行かなくても、Amazonなどで自分の関心がある本を購入することができます。何回か利用すると、おせっかいにも、いや、親切にも、“こんな本はどうですか?”、とメールで提案してくれたりもします。選択の参考として、読者のレビューもついていますが、ある書物がある人を感動させたり、有益と思わせたりしたとしても、別の人にとっては無用の長物ということはよくあります。

 

私は本を手にとって、自分に合うかどうかを吟味するタイプです。いくつかの判断材料があるのですが、題名と文体が特に重要です。小説を例にとると、“痴人の愛 (谷崎潤一郎)"、“仮面の告白(三島由紀夫) “象を撃つ(井上光晴)”、“コインロッカーベイビーズ(村上龍)”などは秀逸で、思わず、何これ?、と思って、手にとりたくなります。文体はまさしく著者の個性の反映なので、自分の感じ方と共鳴する部分があって、すっと頭にはいってくるようでしたら、自分にとっての“いい本”である可能性が高くなります。

 

“わかば書店“は私が大学生になる頃には、姿を消し、その後にコンビニ店などがやってきて、現在は美容室になっています。”わかば書店“の”わかば“は少年少女に対して、たくさん本を読んで、豊かな人生を送ってね、という意味がこめられていたのかもしれない、と立ち読み少年であった私は、都合よく解釈しています。

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