目の前で人が倒れたらー市中での心停止の救命ー
目の前で人が突然に倒れたらどうしますか?そんな時、びっくりして傍観する人もいれば、思わず駈け寄って、”大丈夫ですか、どうしましたか”と大声で呼びかける、あるいは、声をかけながら肩を揺さぶる人もいるでしょう。みなさんは、是非、後者の行動を採用してください。声をかけても、肩を揺さぶっても反応がありません。さて、どうしましょうか?次は呼吸をしているかどうか、を見極めましょう。呼吸がとまっている、あるいは、正常の呼吸をしていなかったら、その倒れた方は心停止かもしれません。
目の前で人が倒れた時、その人が心停止しているかどうかを判断するためには、以下の二つの条件を満たせば、実は十分です。
- 傷病者が無反応:揺さぶり,および大声での呼びかけに対して,反応がない.
- 呼吸停止あるいは正常な呼吸の欠如:心停止直後は喘ぐような呼吸を示す例がある.
心停止なので、脈拍があるかどうかは、必須事項と考えがちですが、それは必須事項ではなく、むしろ確認しない方がいいとされています。緊急の場で、一般市民が正確に脈を触れることは困難ですし、自己の脈拍を誤って傷病者の脈と誤認することもあるためです。
繰り返しますが、市中で人が倒れた時、1と2を満足すれば、すなわち心停止であり、次の行動に移る必要があります。
心停止を確認したら、直ちに胸骨圧迫(心マッサージ)を開始しましょう。そして、周囲に人がいたら、119 callとAED(自動体外式除細動器)を持ってきてくれるように頼みましょう。質の高い胸骨圧迫の条件を下記に示します。
- 圧迫部位:胸骨の下方1/2
- 圧迫の深さ:5 Cm以上.
- 圧迫後は胸壁が完全に戻るまで待つ.
- 圧迫回数:100 回-120回/分
- 胸骨圧迫の中断は最小限にするように注意を払うべきである.
- 救助者が2人以上いたら, 2分毎に胸骨圧迫を交代する.
特に4-6の項目が重要です。人工呼吸に関しては、救急車が到着するまでの平均時間:8.7分であること、感染症の問題、および胸骨圧迫だけ行った場合と胸骨圧迫+人工呼吸の組み合わせの比較で、救命率に差異がないと報告があることから、人工呼吸を省略しても構いません。
AEDは心臓に強い電流を流すことにより、致死的な心室性不整脈(心室細動、無脈性心室頻拍)を停止させ、正常のリズムに戻すことを目的としています。図1は心室細動に対して、AEDを用いて、心拍が再開したモニター心電図です。この時、AEDを操作したのは、偶然に傷病者の傍を通りかかった看護師さんでした。
図2に示しますように、市中の心停止患者を救命するためには、早期の通報(119 call)、早期の胸骨圧迫、および8分以内の除細動(AEDの使用)が根幹をなすことは、この10年以上、変わらない真実です。あなたの大切な人を突然死から守るためにも、心停止の判断、胸骨圧迫(心臓マッサージ)、AEDの使用に習熟しておいた方がいいでしょう。AEDの使用も含む救命処置の講習は長崎では北消防署、中央消防署、日本赤十字社長崎県支部などで定期的に行われています。また、webでその概略を知るのもいいでしょう(参考URL: 一般市民向け 応急手当WEB講習 (fdma.go.jp)
図1:心室細動をAEDで停止
図2:心停止の救命率を向上させる救命処置
ACLSは二次救命処置の事です。アドレナリンなどの薬剤の投与、器具を用いた気道確保などにより構成されます。