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PM2.5と心臓病

[2019.05.03]

PM2.5の大気中の濃度は、大気汚染の指標として定着しているように思います。PM2.5は大気中に浮遊している径:2.5μm以下の粒子であり、環境省のホームページには、その成因として、“物の燃焼などによって直接排出されるものと、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等のガス状大気汚染物質が、主として環境大気中での化学反応により粒子化したものとがあります。”と記載されています。

 

PM2.5は健康被害と密接に関連しており、PM2.5による死亡は世界中で420万人/年に達しています(2015年のデータ)。PM2.5は心筋梗塞、脳卒中、心不全の発症と密接に関連し、PM2.5による死亡の57%は心血管死とされています。PM2.5の侵入経路は気道→肺ですので、呼吸器疾患が増加することは理解できますが、なぜ心臓病が増えるのでしょうか?現在ではPM2.5を初めとする大気汚染物質またはガスによる酸化ストレスの亢進が血管の健康を損なう(動脈硬化を促進する)原因と考えられています。

 

人の健康を損なわないであろうと考えられているPM2.5の日本の環境基準は< 35 μg/m3です。一方、ヨーロッパの基準は<25μg/m3、北米(カナダとUSA)では、< 10-12μg/m3とされており、許容されている環境基準は一致していません。健康被害のリスクを高めるPM2.5の明確なカットオフ値がないことも不一致の一因と思われます。PM2.5の濃度を減らすためには国際的な取り組みが重要と思いますが、個人でできることは、PM2.5の濃度が高いときはマスク着用くらいしかないのが実情です。有効な薬物治療はまだないためです。マスク着用を好む日本人が他国の人より揶揄的に眺められている、と紹介しているTV番組がありますが、意外と賢明な選択ではないのかな、と思います。(参考文献 Eur Heart J 2018; 39: 3543 – 3550)

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