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無呼吸と心臓病

無呼吸の負の効果について:睡眠時無呼吸症候群(SAS)、特に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は心臓病、血管病との密接な関わりがあります。夜間睡眠中の無呼吸・低呼吸に伴って起こり得る効果としては、低酸素血症、低酸素・再酸素化の反復による虚血再灌流障害、および心臓の収縮期における圧負荷の増大が知られています。睡眠中だけではなく終日、認められる効果としては、交感神経活性の亢進(脈拍が早くなり、血圧が高くなります)、酸化ストレスの亢進(鉄が錆びるように血管も錆びていきます)、および血管の炎症などがあります。これらの負の効果が相乗的に作用して、心臓の働きを抑制し、動脈硬化を進展させる結果となります。

 

無呼吸と心血管病:OSAと関わりが深い心臓病、血管病は心臓突然死、冠動脈疾患(狭心症と心筋梗塞)、大動脈疾患(大動脈瘤など)、心不全、肺高血圧、および心房細動など実に多彩です。例えば、長崎みなとメディカルセンターに入院した急性心筋梗塞874例のうち、55%と極めて高頻度にSASの合併を認め、その内訳はOSA:42%、中枢性睡眠時無呼吸(CSA):13%でした。

 

診断のためのステップ:心臓病の患者さんで、症状や身体所見からOSAと診断することは実はかなり難しいのです。例えば急性心筋梗塞の患者さんのうちOSAがある人とない人との間で症状を比較した時、いびきと無呼吸の目撃はOSAのある患者さんで高頻度ですが、日中傾眠と不眠に関しては、両者の間での差異はありません。このことは急性心筋梗塞の患者さんでは、無呼吸がない人でも睡眠障害を訴える人が多いという事実を示唆しているともいえます。また、日本人は小顎のため、肥満者でなくともOSAを合併している人は多いのです。すなわち、OSAと診断するための決め手となる症状や身体所見はないため、診断されていないOSAの患者さんはかなり多い、と私は思っています。そして、医療者側が積極的にSASを診断しようとする試みが大切とも思っています。なぜなら、OSAと診断した患者さんに対しては、CPAP(持続陽圧呼吸療法)を行い、無呼吸の改善に伴って、病気の予後が改善する可能性があるためです。図に私が考える診断のためのステップを示しています。OSAの症状がある人だけではなく、2-6の病気がある人に対しては、まずはウオッチパットなどの簡易睡眠ポリグラフィーでスクリーニング検査を行います。次に無呼吸低呼吸指数(AHI)≥20回/時間の人に対しては、入院のうえ睡眠ポリグラフィー検査を行い、重症度の判定とCPAP治療の適応決定を行います。睡眠ポリグラフィー検査はかなり煩雑な検査で、解析の時間も要するため、1-6の患者さんすべてにこの検査を行うことは無理があるため、スクリーニング検査の段階を経ることが現実的です。

睡眠時無呼吸セルフチェックシート:https://nakashima-naika.com/wp-content/uploads/2020/10/39cadc470c50b97c5d04b780d15d8b98.pdf

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