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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と血栓症ーインフルエンザとの比較ー

[2022.10.04]

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が動脈血栓症(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中)および静脈血栓症(急性静脈血栓症、肺塞栓症)の発症リスクを高めることが知られています。一方、インフルエンザも血栓症のリスクを高めることが知られています(当ブログでも“インフルエンザ-急性心筋梗塞にもご用心-”のタイトルで御紹介しています)。感染を誘因とした血栓症リスクに関して、COVID-19とインフルエンザを比較した報告がありますので、御紹介しましょう。

 

対象は入院治療が必要となった、すなわち比較的に重症な患者さんが対象です。ワクチンが利用できなかった頃のCOVID-19患者(COVID-19/ワクチン開発前):41443人、ワクチンが利用できるようになった頃のCOVID-19患者(COVID-19/ワクチン開発後):44194人、インフルエンザ患者:8269人の間で、発症後90日間の期間に発症した動脈血栓症と静脈血栓症の頻度を比べています。結果を下記に示します。

 

  1. 動脈血栓症の頻度はCOVID-19/ワクチン開発前:15.8%、COVID-19/ワクチン開発後:3%、インフルエンザ:14.4%とほぼ同程度の頻度でした。
  2. なお、もともと心血管疾患のある患者さんに限ると、COVID-19は動脈血栓症のリスクを高めました。インフルエンザと比べたときのリスク比(何倍、発症リスクを高めるかということ)は、COVID-19/ワクチン開発前:1.10倍、COVID-19/ワクチン開発後:13倍でした。
  3. COVID-19はインフルエンザと比べて、明らかに静脈血栓症の頻度を高めました。その頻度はそれぞれ、COVID-19/ワクチン開発前:9.5%、COVID-19/ワクチン開発後:9%、インフルエンザ:5.3%でした。

 

入院が必要なCOVID-19ではインフルエンザと比べて、静脈血栓症のリスクを高めることが明らかですが、その詳細な機序の解明が待たれるところです。なお、注意点として、ワクチン開発前と開発後で血栓症のリスクは同等でしたが、このことはコロナウイルスのワクチンの有用性を否定するものではありません。なぜなら、ワクチン接種は重症化リスクを低下させる、すなわち入院リスクを低下させることが確立しているからです。

 

参考文献

JAMA 2022; 328: 637-651.

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