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私の風邪診療

[2024.01.23]

1月7日・日曜日は当番医で、90数名の患者さんが受診し、その80%以上は風邪症状(鼻汁、咽頭痛、咳嗽、喀痰など)を認める患者さんでした。COVID-19(コロナウイルス感染症)およびインフルエンザの抗原検査が陽性となった方も多く、両疾患の感染の勢いは現在も継続しているようです。今回はインフルエンザとCOVID-19以外の風邪に関して、みなさんが抱いている疑問に答えるQ & Aの形式で話をすすめ、最後に私の風邪診療に関わる基本的な考えをお話ししたいと思います。

 

Q1:風邪を初期だと思うので、早めに薬を飲んで治したい。

風邪の原因となる病原体の80-90%は、ウイルスです。風邪の原因ウイルスは多種類に渡り、風邪が治るということは、そのウイルスが自身の免疫の力によって、排除されることを意味します。すなわち、風邪が軽くて済んだ方は、自身の免疫の力によって軽く済んだわけです。薬の力によってウイルスによる風邪の発症を予防したり、進行を防いだり、治癒を促進することはありません。

 

Q2:熱があって、だるさもあります。早く治すために抗生物質を下さい。

抗生物質の標的は細菌であるため、抗生物質はウイルスには効果がありません。よって、風邪に対して、多くの場合は抗生物質を投与する必要性はありません。

 

Q3.風邪で抗生物質を投与する場合は?

抗生物質の投与は細菌感染を疑う時に限って、私は行うようにしています。では、どんな時に疑うのか?症状の面では38.5℃以上の発熱、咽頭痛が強くてものを飲み込むことも困難、膿性痰(黄色や緑色などの色がついて、かつ、粘度が高い痰)を伴う場合などです。咽頭の外観(見た目)としては、発赤が強い(咽頭全体が真っ赤)、扁桃が著しく腫れている、膿の散在などです。また、ウイルス感染では白血球数はあまり増加しませんが、細菌感染では白血球数は増加することが多いため(9000/μL以上)、細菌感染を疑うときは白血球数を調べてみることが私の場合は多いです。なお、細菌感染が疑われるからといって、必ずしも抗生物質を投与しなければいけないというわけではなく、風邪の程度や患者さんの年齢、基礎疾患(糖尿病、呼吸器疾患、心臓病など)の有無、免疫を低下させるような薬の内服がないか、などによって投与の適応を決めるようにしています。

 

Q4:風邪を早く治したいです。どうすればいいですか?

繰り返しとなりますが、風邪の罹病期間は自身の免疫の力と感染したウイルスの力関係によって決まります。治癒を促進する薬はありません。十分な睡眠と飲水、過労を避ける、飲酒をしないなどの一般的な養生が必要です。中には喫煙を継続しながら、咳が収まらない、咳止めを欲しい、といわれる方もおられますが、喫煙をしながらの咳の治療は難しいため、少なくとも風邪をひいている間は禁煙してください。

 

Q5:免疫力を高めるにはどうしたらいいですか?

免疫力を高めることが確実に証明された薬やサプリメントはないものと思ってください。ふだんからの運動習慣、過食や偏食をさける、ストレスを上手にかわす、6-8時間の睡眠時間の確保などの普段からの生活習慣が免疫能の向上に寄与します。

 

風邪は基本的に対症療法が基本となります。投与する薬の種類が増えれば、副作用のリスクも増えるため、投与する薬は少ないほどいいでしょう。よって、発熱や咽頭痛に対する解熱薬(アセトアミノフェノンやロキソプロフェンなど)のみで、対応して十分だろうというのが私の考えです。その他には日常生活にも影響している苦痛な症状があれば、それに対応する薬(去痰薬や鼻炎の薬など)を処方することになります。咳は生体防御反応(痰の排出や気道内への異物の侵入の防止)であるため、咳止めは却って治癒までの期間を延長させることもあり、喘息発作である場合は、それを悪化させる場合もあるため、投与をできるだけ慎重にしたいというのが、自戒をこめた私の考えです。

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