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4時間以上:CPAP治療時間の核心

[2024.03.20]

睡眠時無呼吸症候群は閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸に大別されます。CPAP(持続陽圧換気)治療の対象となる無呼吸は閉塞性睡眠時無呼吸です。中枢性無呼吸に関しては、CPAPを始めとする陽圧換気の有効性は極めて限定的であり、高度な心機能低下の人にとっては、時に有害となることもあると知られています。

 

閉塞性睡眠時無呼吸は上気道を支える筋肉が睡眠中に弛緩することにより、舌の根元が落ちこみ上気道を閉塞するため、呼吸運動をしているけれども空気が肺に入っていかない病態です(図を参照)。閉塞性睡眠時無呼吸では無呼吸による低酸素血症、心筋負荷、交感神経の持続的な活性化などにより心血管疾患が発症しやすくなります。また、すでに心筋梗塞や脳梗塞などの既往がある人はそれらの病気が再発しやすくなります。CPAPは患者さんごとに適した設定圧で気流を流すことにより、気道の閉塞を予防する治療法です。日本ではAHI(無呼吸低呼吸指数:睡眠時間1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数の和):20回/時間以上の人に保険適応があります。

 

図:閉塞性睡眠時無呼吸の病態

 

睡眠時無呼吸症とは?高血圧や脳卒中、糖尿病の原因にも | NHK健康チャンネルの図を改変

 

高血圧に対する降圧薬の投与が心血管疾患を予防するためには、降圧目標値を達成するのに十分な薬の用量とできるだけ毎日、内服することが必要なように、CPAPもAHIの目標値をみたす適切な圧の設定とできるだけ毎日、装置を使用して頂くことが必要となります。CPAPの心血管疾患の再発予防効果を検討したあるメタアナリシス(いくつかの臨床研究を統合して分析し、強固な事実を明らかにする方法)では、平均のCPAPの施行時間:4時間以上の人は4時間未満の人に比べて、心筋梗塞や脳卒中などの再発が31%低下することを明らかにしています。

 

とはいえ、薬の内服に比べて、毎日のCPAPの装着は患者さん自身が行うため、多少の面倒くささがあるため、患者さん自身の努力と治療意欲の維持が必要となってきます。よって、CPAPを導入するときに睡眠時無呼吸による体への有害な効果とCPAPによりどのような利益があるのか、ということを十分に説明することが不可欠になってきます。何事も最初が肝心だからです。CPAPは無呼吸を劇的に改善させるため、多くの患者さんでAHI5回/時間未満(正常レベル)を達成することができます。中にはそれに到達できない方もおられますが、そのような場合は、AHI:15回/時間未満(軽症の睡眠時無呼吸)を達成できれば、必要十分です。軽症の睡眠時無呼吸の場合は、無呼吸による有害な効果はないだろう、と考えるからです。その根拠は多数の臨床研究(私が以前に行った研究も含む)の結果に依っています。AHIの正常化をめざして設定圧を高くしすぎると気流の増加に伴う不快感がまして治療の中断につながったり、高すぎる設定圧は心拍出量を減少させたりするリスクがあります。そのため設定圧の上限値ができるだけ10CmH2Oを超えないような圧処方を私は心がけています。

 

“4時間以上のCPAP”、これがCPAP治療の核心といえるでしょう。

 

参考文献

JAMA. 2023;330:1255-1265.

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