メニュー

心臓病の救急ー救急隊の方へー

[2021.05.24]

急病で、あるいは外傷などで救急隊のお世話になった方は少なくないと思います。医者になってから私も1回だけ病気(十二指腸潰瘍穿孔)による約2週間の欠勤があり、その時には救急隊の方のお世話になりました。2019年の全国の救急車による救急出動件数は663万9,767件で、20年前の1.7倍、10年前の1.3倍と急激に増加しています。2019年の疾患の内訳をみると急病(内科的な病気)が65.2%を占め、年齢構成では75歳以上の高齢者の割合が44.5%と高い割合になっています。

 

心臓病の救急は勤務医の頃の仕事の重要な柱でした。冬になると毎日2-3件の救急搬送があり、救急隊の方にはずいぶんと助けていただきました。心停止が搬送されたときは、一緒にバックバルブマスクを用いた人工呼吸や胸骨圧迫(心マッサージ)を行いました。チーム医療という言葉が定着していますが、心臓病の救急にとっては、院内のスタッフに加えて救急隊員の方もチームの一員でした。心臓病の救急患者さんをいち早く長崎みなとメディカルセンター循環器内科に搬送してもらいたい、救命可能な人はすべて救命するので、という思いもありました。互いに切磋琢磨する目的、考えを等しくする目的で、2-3月に1回くらいの頻度で、代表的な救急症例をピックアップして、救急隊員と医師、看護師、臨床工学士などの院内スタッフとの間で、搬送や搬送後の経過に関しての討議を行っていました。この検討会は有意義な時間だったと思います。

 

救急隊の業務は搬送だけではなく、傷病者の状態の把握、疾患の推定とそれに基づく搬送先の決定、一次救命処置(BLS:心マッサージ、バックバルブマスクによる人工呼吸、AEDの使用など)、医師の指示を受けての二次救命処置(ACLS: 輸液、エピネフリンの投与、器具を用いた気道確保など)etc.とその業務はさまざまです。救急隊員のうち救急救命士の資格を持つ人もずいぶんと増えてきましたが、救急救命士のみの判断でできる医療行為は限られています。最初の頃はAEDの使用すら医師の指示が必要な時代もありました。ショックが必要な心停止のリズムかどうかに関してはAED自体が判断するため、医師の判断を待つ時間は全く無駄な時間でした。現場から病院への搬送までの間、救急車内でショック、心停止の方に対して行う治療行為は半ば決まっており、十分なトレーニングを受けた救急救命士なら二次救急処置の大部分も彼(女)らの判断で実行できるようにするべき、というのが私見です。

 

新型コロナウイルス感染症の時代、救急隊員の仕事も過酷さを増していると思います。まず、通報を受けたらほぼ必ず傷病者の許にかけつけなければなりません。傷病者が苦悶のあまり狭い救急車内で飛沫を飛散させる状況も容易に推察されます。救急隊員は医療従事者で、かなり感染リスクも高いわけですから、彼(女)に対する一刻も早いコロナクチンの接種が、必要で、合理的かつ人道的な施策でしょう。

 

参考URL: c941509de3f85432709ea0d63bf23744756cd4a5.pdf (fdma.go.jp)

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME