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池島で投げ釣りーマゴチ、チヌ、ヘダイ、そして謎の怪魚ー

[2023.04.19]

4月初旬。チヌご飯をまた食べたいと思いたった私は、前回の釣行時にキビレチヌ:3枚と塩焼きサイズのマダイを釣った結の浜海水浴場に隣接する堤防にふたたび立っていました。日没前の18時頃にキスと思われる鋭い振幅のあたりがあったのみで、その夜はいっさいの魚からの反応はありませんでした。これほど静かな夜は久しぶりでした。この堤防周囲の海域は潮の流れが緩慢なため、魚たちの岸際への侵入に関しては、日ごとのばらつきが大なのかもしれません。

 

むかし9連敗した苦い記憶、トラウマがある私にとって、次回の釣行時の連敗は何としても避けたい処でした。よって、苦しいときの池島頼みというわけで、4月中旬、私は池島の北側の堤防に立ちました。潮廻りは中潮、満潮: 23時27分、干潮:16時54分と翌日の5時21分で、潮の満ち引きの時間をフルに活用できるよい潮でした。

 

図1に翌日の夜明け直後に撮影した堤防の先端付近の様子を示しています。写真では分かりにくいかもしれませんが、眼前のうねるような潮の流れが複雑に絡み合う光景に心が奪われるのは、きっと私だけではないでしょう。写真では竿を4本、並べています。夜の投げ釣りでは、自分が予測した魚道に餌を置いて魚を待ち受ける釣りであるため、複数本の竿を用いて、仕掛けを投げ分けることが常道です。私の場合は通常は3本、餌とりの小魚が少ないとき、または、気合いが入っているときは4本の竿を用いています。今回は気合い十分、だったのです。池島では堤防の左角45°の方向に投げた仕掛けに最も高確率で当たってきます。餌はいつもの岩虫の他に、かつて試したことのない“かつおのはらも”を準備しました。異なる餌には異なる魚が食いつくかもしれないからです。ちなみに“かつおのはらもの匂いは強烈であるため、例え海中にあっても、”なに、この変な匂い“と魚もびっくりするはずで、そのうち特に好奇心の強い彼(女)が観察にやってくるに違いありません。

図1:堤防先端からみる光景

 

18時過ぎから釣り開始。早々に小さめのイラを捕獲、小さいのでこれでは連敗を免れたとはいえません。19時すぎに南側の旧堤防が騒がしくなり、若者たち数人が釣りに来ていました。イカ釣りに来たのかな、と考えていたまさしくその時に、堤防と堤防の間のフェリーの通路、すなわち海底が深く掘れているであろう場所に仕掛けを投擲した最右端の竿がペンシルロケットのように飛んでいき、かろうじて道糸が三脚のアームに絡まってとまりました。魚が“かつおのはらも”を食ったのです。竿先が界面に向かってお辞儀を繰り返しており、絡まった道糸を必死でほどいて、合わせを入れると魚はまだついていました。海面に姿を現した魚体に目を凝らすと、頭でっかちで、体高が低いあの魚、そう、マゴチでした(図2)。マゴチは基本的に小魚を食する生態なので、“かつおのはらも”に魅せられ、食いついてしまったのでしょう。マゴチは虫餌をあまり食べないため、作戦成功です。

図2:マゴチ56Cm

 

その後はチヌ(クロダイ)の時合となりました。最初は20時30分、こつんこつんとした当たりで、チヌ:39Cm(図3)。きれいな魚体で、鼻筋がやや青みがかっていて、居着きではなく、回遊系のチヌと思われました。抱卵していて、産卵が近いことを示唆していました。21時前に旧堤防の若者たちは姿を消し、緑色の常夜灯の点滅が望見されるだけとなって、急に寂しくなりました。まあ、朝まで釣る物好きな人は滅多にいないということです。21時50分、右に投げていたはずの竿の道糸が左側に向かっていて、チヌ:42Cm(図4)が餌を食べて、移動していたのでした。23時、左から2番目の竿先が一気に突っ込み、これはマダイのあたりでは?、と心がしばしときめきましたが、結局、3匹めのチヌ(図5)でした。このチヌはかなり大きくて、ひょっとして年なしかも(年なし:50Cmを越えるチヌで、年なしチヌを釣ると釣り人から尊敬を受けます、たぶん)、と期待しましたが、計測では2Cmほど及びませんでした。チヌはすべて岩虫を食べており、この間、“かつおのはらも”にはマアナゴとクロアナゴがそれぞれ1匹、釣れたのみで、釣った後にすぐに放流しました。もっとも、身餌にはアナゴ系やエイがよく当たってくるので、これは想定内です。

図3:チヌ39Cm

図4:チヌ42Cm

図5:チヌ48Cm

午前1時30分まで釣って、その後、波音を聞きながら2時間ほど仮眠し、釣りを再開。その1時間後に左端の竿先が入り、初めはものものしい引きでしたが、中途からふっと軽くなって、ヘダイ:40Cm(図6)がやってきました。ヘダイは銀色の魚体で、顔がまんまるで宅の天(ねこ)のような風貌をしています。一般にヘダイの引きは最初が強く、中途から急に弱々しくなって、針からはずれたのでは?、と不安にかられることもある魚です。

図6:ヘダイ40Cm

 

夜が明けてからそろそろ片付けをしないと、思っていたときでした。“かつおのはらも”の右端の竿、先に述べた船道に投げ込んでいた竿が、大きく弧を描くように上下しています。“かつおのはらも”は長寸:10Cmほどあるため、魚が食い込むまで時間がかかると考え、しばし1-2分ほど待ちます。断続的にドラグ音が響き、もうよかろう、というわけで、大合わせ。魚はばっちり乗りましたが、重量感がある強烈な引きをみせ、超大物用のタマンモンスター(竿の商品名)が限界まで屈曲し、しかし、魚は下にどんどん突っ込む動きを見せ、リールを十数回巻いた処でぜんぜん巻けなくなりました。こんなときドラグを緩めて道糸を出し、沖で魚を遊ばせたり引いたりしながら、魚を疲れさせる方法が提唱されています。しかし、夜を徹して釣りに集中したため、魚を疲れさせる前にすでに私が疲れているのでした。よって、いつもの速攻勝負というわけで、どうにかリールを2-3回巻けたところで、ふたたび突っ込まれ、たぶん岩角などで針についた糸(ハリスといいます)を切断され、その反動で堤防に私は転倒したのでした。“池島には怪物がいる”、そうつぶやき私は島を後にしました。

 

マゴチの刺身、煮付けともに程よい身の質感があって、絶品でした。イラの湯引きもおいしく食し、さらにチヌを昆布締め、おふざけチヌのトマト和え(新作:私が命名)で満喫できました。

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