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慢性静脈不全(下肢静脈瘤、むくみ、皮膚潰瘍)

[2025.03.20]

日頃の診療において、下肢静脈の病気は時に診察する機会があります。すなわち図1に示すようにクモの巣状静脈瘤、静脈瘤、浮腫、過剰な色素沈着、皮膚潰瘍などがその代表的な所見で、“慢性静脈不全”と称されます。もちろん同一下肢にこれらの所見が併存している場合も少なくありません。静脈は皮下を走る表在静脈と深部静脈に分かれます。慢性静脈不全は表在静脈の病気で、美容的な問題のほかに、足のだるさ、かゆみ、関節の可動範囲の制限、感染など多様な症状にも関連してきます。

図1:慢性静脈不全の症状

病因:慢性静脈不全は静脈の血圧(静脈圧)の上昇が一次的な原因とされています。静脈圧の上昇は血管内皮の障害、血管透過性の亢進(水分がもれやすくなる)、炎症、活性酸素の増大などを介し、静脈瘤、浮腫、皮膚色素沈着、皮膚潰瘍を形成していきます。静脈圧の上昇には器質的な原因と機能的な原因があります。代表的な器質的な原因は、静脈弁不全です。静脈弁は血液の逆流を防ぐ役割を担っています。そのため、逆流防止弁が変性し、正常に働かなくなると血液が静脈内で逆流、停滞し、静脈圧の上昇をもたらします(図2)。機能的な原因はさまざまです。肥満は、腹腔内圧の上昇によって、下大静脈を圧迫し、血流を妨げることにより静脈圧を上昇させます。ふくろはぎの筋肉の収縮は静脈の血液を心臓に戻すための決定的な役割を果たしています。1回の筋肉の収縮で100-150mLの血液を駆出し、静脈圧を25 mmHgほど低下させる効果があります。その他には肺高血圧、体液過剰、睡眠時無呼吸なども静脈圧上昇の原因となりえます。

図2:正常な静脈弁(左)と不全弁(右)

危険因子:高齢、女性、肥満、妊娠、深部静脈血栓症の既往、長時間の立位が確立された危険因子です。また、遺伝的な要因の関与も指摘されています。

 

日常生活での注意点(患者さんができること):下肢の静脈不全の予防または改善に関連する注意点を下記に箇条書きにしました。

  1. 肥満がある人は、減量に努めてください。
  2. 長時間の立位、または座位を避けましょう。なお、長時間の立位、座位が避けられない人は1時間ごとに5分ほどの下記の運動を行ってみてください。
  3. 運動:ふくろはぎの筋肉のポンプ効果を高めるために行います。足指の屈伸も並行して行う足関節の屈伸運動や回旋運動、ジョギング、ウォーキングなどがおすすめです。下肢に過大な重量負荷のかかるような運動(ウエイトリフティング)は避けてください。
  4. 正座を避けましょう。
  5. すでに慢性静脈不全のある方は、臥位をとるときは下肢を挙上しましょう。

 

私も平日で8時間以上、土曜日と日曜日は6時間以上、座位で過ごしているため、時に足関節を屈伸、回旋させたり、ふくろはぎの筋肉をマッサージしたりしています。

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