メニュー

夏の高血圧ー過降圧に注意ー

[2025.07.31]

あっという間に水分が蒸発してしまう強烈な暑さのために、体調の維持に苦労する方も多いかと思います。厳寒期は厚着をすれば何とか凌げますが、夏は何ともならない、です。私も釣り用に汗をかいても涼しくなるという謳い文句のウエアを購入してみましたが、そして、大量に発汗したにも関わらず、その効果を感じることはできませんでした。

 

高血圧の患者さんにとって、夏は過降圧のリスクが高い季節です。熱波による水と塩分の喪失、血管拡張などが、血圧を低下させるためです。そのため、普段の診察でも夏季は降圧薬を減量や休薬が必要とされる場合が多々あります。私の場合、その頻度は少なくとも50%前後には達しています。

 

ふらつき、めまい、倦怠感、および立ち眩みなどが過降圧を示唆する症状です。自分で過降圧を知るための最も簡便な方法は、家庭血圧の記録です。家庭血圧が明らかに低下していて、かつ、過降圧の症状があれば、降圧薬の減量、中止の有力な指標となります。過降圧を避けるための注意点を列挙しましょう。

  1. 繰り返しになりますが、家庭血圧の記録を行いましょう。何より事実の把握が重要なためです。
  2. 飲水量は体格にもよりますが、1日あたり1500 mL前後を目安にしましょう。屋外での仕事が多い方は、さらに+1000-~+2500 mL程度を上乗せして構いません。
  3. 但し、心臓病(特に心不全の既往がある人、心機能が低下した人)や腎臓病がある方は、適切な飲水量をかかりつけの医師に相談しましょう。
  4. 塩分に関しては、屋内での仕事でしたら、特に余分に塩分を摂取する必要はありません。屋外での仕事が主体となる方は塩分の喪失も過大となるため、1日当たり1-2g程度を塩タブレットで補給してください。
  5. 室内の温度は26-28℃を目安にしてください。
  6. 散歩は午前中は午前9時まで、午後は日没前後がおすすめです。
  7. 暑さ指数(気温、湿度、日射・輻射を頭語した指数):28℃以上では、外での運動を避けたほうが無難です。

 

症状のほかに過降圧が体に与える不利な影響は、腎機能障害です。特に外で仕事をする方に多く、中には急性腎不全にまで至る方もいます。脱水による循環血液量の低下、および血圧の低下が腎血流の低下を招き、腎機能を悪化させるものと思います。一方、夏の心血管疾患(心筋梗塞、大動脈解離など)の発症頻度は冬に比べて、明らかに低下するため、低めの血圧(注:過降圧ではありません)は心血管系に関しては、保護的に働くともいえるでしょう。

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME