炭水化物食品と食後高血糖ーグリセミック指数の話しー
“グリセミック指数”と心血管疾患の関連を精査した論文が目に留まりました。“グリセミック指数”は私にとっては、聞きなれない用語であったため、さっそく調べてみた処、それはある食品を摂取したときの食後の血糖値の上昇の程度を示す指標であることが分かりました。食後高血糖は心筋梗塞や脳卒中の発症と密接な関連があることが明らかとなっています。
グリセミックス指数の計算式:食品Aに含まれる炭水化物50gを摂取後の血糖値の面積/ブドウ糖を摂取したときの血糖値の面積×100
図にグリセミック指数の高い食品と低い食品の血糖変動パターンを例示しています。
文頭に記した論文の内容について述べてみましょう。試験に参加した人数は137851人と大規模な研究で、地域も北米、ヨーロッパ、アフリカ、中東、南アジア、南アジア、東南アジア、中国といろんな国の人々で構成されている点が特徴です。質問紙表により被験者の食行動のうち、特に炭水化物を多く含む食品に着目して、グリセミック指数が経過観察中の死亡と心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)の発症に及ぼす影響を精査しています。
結果は明確なものでした。グリセミックインデックスが高い群では最も低い群に比べて、死亡おとび心血管疾患の発症のリスク比が1.25倍と高かったのです。この事実は試験開始時の心血管疾患の合併の有無によっても変わりはありませんでした。また、高グリセミックス指数の健康にたいする悪影響は、肥満者(肥満度:BMI≥25 Kg/m2)においてより顕著でした。
この研究結果は食後の血糖上昇が小さい食品が健康の維持につながることを示唆しています。低グリセミックス指数の食品の利点として、1.食後の血糖値が低い; 2.コレステロール値が低くる; 3.炎症を示すCRPが低くなる(CRPの高い人は心血管疾患を発症しやすいことが知られています); 4.血圧値が低くなる、などの利点があり、その結果として、糖尿病や心血管疾患のリスクを低下させる、と論文の中では考察されています。
この論文が教えてくれたことは、例えば糖尿病の人、肥満の人、中性脂肪の高い人に対して、単に糖質を控えましょう、あるいは、炭水化物を控えましょう、という説明だけでは、十分ではないということです。炭水化物の多い食品の摂取は不可欠なわけですから、食後高血糖を起こしにくい食品、すなわち低グリセミック指数の食品をおすすめすることも重要と思いました。すなわち、穀類では白米よりも玄米や五穀米が(グリセミック指数:84 vs 56 vs 55)、パン類では食パンよりライ麦パンが(91 vs 58)、麺類ではうどんよりそばが(80 vs 59)、より質の高い炭水化物食品といえるでしょう。
参考文献
N Engl J Med 2021; 384:1312-1322
参考URL
- 今さら聞けない? 糖質制限とGI・GLの正しい関係 | House E-mag | ハウス食品グループ本社 (housefoods-group.com)
- 低インシュリンダイエット(ダイエットガイド河口哲也) GI値一覧表 (dietguide.jp)