牡蠣に関する考察
[2025.02.25]
あちらこちらで牡蠣小屋が作られ、たくさんの人が牡蠣の独特のぷりんぷりんの食感、濃縮された二枚貝の旨味に舌鼓を打つ光景は、冬ならではの風物詩といえます。子が小さかった頃に磯混じりの浜で、みなで採取した小粒の天然牡蠣の素晴らしさを、私は鮮明に記憶しています。そういえば、家族を強制連行して、ある堤防で子どもらと強制キス釣りをしていた時に、素潜りをしていた漁師のおじさんから、採ったアワビを投げ与えられたこともありました。子が小さいと何かといいご相伴に与ります。
牡蠣の中毒症状:腹痛、嘔吐、下痢、時に発熱は食中毒の代表的な症状です。2月24日は休日当番医で、このような症状を訴える患者さんが6人受診し、うち5人の方が牡蠣の摂取が原因と思われる食中毒の方々でした。牡蠣の食中毒は3つのパターンに分類されます。このうち感染症が最もよく診るパターンです。
- 感染症:冬季、とくに1月と2月はノロウイルス、夏季は腸炎ビブリオなどのビブリオ菌が代表的な病原体です。一般的に摂取後、12-72時間で発症します。2月24日の牡蠣による食中毒と思われた患者さんたちは、およそ48時間で発症していました。
- 貝毒:毒素を持った植物プランクトンを摂取することにより、貝の体内に蓄積された毒素を摂取することにより発症します。加熱しても毒性は不変です。下痢性貝毒と麻痺性貝毒があります。厚生労働省のHPには麻痺性貝毒に関して、“中毒症状はフグ毒中毒によく似る。食後30分程度で軽度の麻痺がはじまり、麻痺は次第に全身に広がり、重症の場合には呼吸麻痺により死亡することがある。”と何だか恐ろしいことが記載されています(自然毒のリスクプロファイル:二枚貝:麻痺性貝毒|厚生労働省)。幸い日本では重要な貝類の毒性値を測定し、基準値を超える貝類は出荷規制されるそうです。
- アレルギー:摂取からアレルギー症状までの出現時間は、アレルギーのタイプによりさまざまです。アナフィラキシーでは、15分以内に起こりえます。具体的なアレルギーの症状は、皮膚症状(蕁麻疹など)、呼吸器症状(喘息、呼吸困難など)、消化器症状(腹痛、下痢)、血圧低下などです。牡蠣に限らず特定の食材を摂るたびに、これらの症状が再現される方は、アレルギー検査の結果に関わらず、その食材を避けた方がいいと思います。
牡蠣による食中毒の予防:
- 生食をしない:牡蠣の生食、特に酢牡蠣は最高に美味であり、最高の酒のつまみです。ですが、中毒症状の頻度が高くなるため、下痢、嘔吐を想定内と覚悟して、食べる必要があるでしょう。ここ数年、泣く泣く、私は牡蠣の生食はしていません。
- すでに殻が開いた牡蠣は調理に用いない(魚の餌にはいいかも?)。
- 十分な加熱:殻付きの牡蠣をボイルする際は、殻が開いたあともさらに4-5分ほどボイルすることがすすめられています。蒸す際は十分に蒸された環境で、4-9分ほど蒸すといいそうです。
- 調理する際は、鍋に一層がいいでしょう。牡蠣を重ねると加熱が不十分な個体がある可能性があるためです。一方、加熱した後も殻が開かない牡蠣は食べないようにしてください。