アニサキス症は怖いけど。
ある日の夕方のことです。”締めサバを食べてから、胃が痛くなりました”という症状経過で、受診された患者さんがいました。詳細に話しを訊くと、まず前日の夕食で締めサバを食べ、1-2時間後に蕁麻疹が出現。そして、0時頃から心窩部の激痛が生じ、朝まで一睡もできなかった、とのことでした。即座に胃アニサキス症ではないか?、と思いました。魚の生食→心窩部痛だけでも胃アニサキス症が疑われますが、腹痛に先行した蕁麻疹が虫体の刺入に伴うアレルギー反応と思われ、その疑いを強くしました。さっそくその日の輪番病院であったE病院に御連絡し、幸い消化器内科の医師が日直でしたので、緊急内視鏡検査で虫体を摘除して頂き、患者さんの症状も改善しました。なお、家庭で用いる酢、わさび、塩などではアニサキスは死滅しないことが知られています。
アニサキスとは?:アニサキスは寄生虫の一種で、体長:2-3Cm、幅:0.4-1mmくらいの線虫です。アニサキスの幼虫が寄生したオキアミなどの海洋性プランクトンを魚が食べる→魚の内臓や筋肉に幼虫が寄生する→その魚を人間が食べる、という流れで感染が成立します。一般的にアジ、サバ、カツオ、ブリなどの青魚、イカ類に多く寄生するとされていますが、ひらめ、真鯛などのなどの白身魚にも寄生します。実際、夏に釣りあげたばかりのカワハギを捌いたところ、筋肉内で動く、くるくると身を巻いたアニサキスを発見した経験もあります。
アニサキス症の症状:アニサキスは寄生部位により胃アニサキス症と腸アニサキス症に大別されます。多くは胃アニサキス症であり、激しい心窩部痛、悪心・嘔吐などが特徴です。刺入した胃粘膜周囲のびらん、潰瘍形成による痛みです。腸アニサキス症では、下腹部痛、腸閉塞の症状(嘔吐など)が代表的です。腸閉塞は小腸に刺入した時に合併しやすいとされています。
アニサキス症の予防:まず魚の内臓は生食しないことが原則です。珍味ではありますが、致し方ありません。同様に魚をまる1匹購入する際には、お店で内臓を取りだしてもらいましょう。刺身として食するときには、目視で虫体が魚体に潜んでいないか、確認しましょう。
魚の味には季節性があり、旬の魚の刺身、すしは大変、おいしいです。また、長崎では季節ごとに様々な魚の便りがあります。私はかなり刺身が好きな方ですので、十分に注意しながら、引き続き季節の魚の刺身を堪能したい、と思っています。
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