インフルエンザワクチン
先週、長崎県においてインフルエンザの流行期に入った、という報道が耳目を集めました。同時に、インフルエンザは冬季の感染症という印象が強いため、いつもより流行時期が早すぎるという驚きにかられた人も多いのではないでしょうか?10月初旬から各医療機関にインフルエンザワクチンが供給され、予防接種が可能となります。今回はインフルエンザワクチンに関して、考えてみました。
“せっかく予防接種を受けたのに、インフルエンザにかかってしまった、インフルエンザの予防接種を受けても意味ないのでは?”という巷の声はよく耳にします。たとえば“はしか”の予防接種を受けると95%以上の人が免疫を獲得し、“はしか”にかかりにくくなりますが、インフルエンザワクチンにはそのような高い効果は期待できません。なぜでしょうか?
インフルエンザワクチンの有効率は10-60%と幅があります。インフルエンザウイルスにはいろんなサブタイプ(ウイルス株)があるため、その年の流行株を予測して製造されたワクチンと実際に流行したウイルスとの抗原の一致率が低ければ、ワクチンを接種しても有効な抗体産生が行われないため、予防効果が低下する結果となります。また、御高齢の方ではワクチンの効果が低下することが知られています。
インフルエンザ関連の合併症としては、インフルエンザ肺炎、細菌性肺炎、筋炎、心筋炎、および脳症などがあります。5歳以下の子供、65歳以上の高齢者、心臓病、呼吸器疾患、糖尿病、および免疫能が低下した状態では、インフルエンザが重症化しやすく、また、合併症のリスクが高いことが知られています。
インフルエンザワクチンは不完全ではあるものの発症を予防する効果があり、また、合併症の頻度を低下させる効果があります。そのため、日本のみならずさまざまな国で毎年のインフルエンザの予防接種は推奨されています。
厚生労働省のホームページにインフルエンザに関するさまざまなQ&Aが掲載されていますので、ご興味のある方は参照してみて下さい。
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html)
参考文献
N Engl J Med 2016; 375: 1261-1268