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インフルエンザー急性心筋梗塞にもご用心ー

[2019.12.23]

冬季は心臓病を専門とする医師にとって、極めて多忙な季節です。ひとつは急性心筋梗塞、大動脈解離などの血管の病気が夏季に比べると明らかに増加するためです。もうひとつはそれまで安定していた心不全の患者さんが、体調を崩して入院する頻度も高くなります。安定していた心不全が増悪するきっかけは様々ですが、肺炎などの感染症は心不全を悪化させる重要な増悪因子です。冬季の代表的な感染症はインフルエンザです。このところ、わたしたちのクリニックでもインフルエンザの患者さんが増えてきています。そこで、今回はインフルエンザと心筋梗塞の発症に関して検討した興味深い論文をご紹介しましょう。

 

対象は急性心筋梗塞を発症し、かつ、心筋梗塞発症の前後1年間(合計2年間)の間にインフルエンザの感染が遺伝子診断などで確かめられている332人の患者さんです。これらの患者さんは364回、急性心筋梗塞による入院を経験しています(2回以上、心筋梗塞を発症した方もおられるものと思います)。インフルエンザ発症後1週間以内での入院数は20回/週で、他の期間の1週間当たりの入院数:3.3回/週でした。すなわち、インフルエンザ感染後1週間以内での急性心筋梗塞の発症リスクは他の期間に比べて、6.05倍も高かったのです。この傾向は65歳以上の方で顕著でした。なお、インフルエンザ発症後8日め以降では心筋梗塞発症のリスクは増大しておらず、感染後1週間以内が要注意期間といえます。

 

感染により血栓ができやくなること、心臓の仕事量の増大や低血圧などが血管にストレスを与えることなどをインフルエンザが心筋梗塞発症のリスクを高める原因として、著者らは推測しています。彼らはまた別の重要な事実も指摘しています。インフルエンザ様の症状を呈し、結果として別のウイルスが感染の原因であった場合でも、心筋梗塞の発症リスクは増大するのです(RSウイルスで3.51倍)。特に65歳以上の方で、インフルエンザのような重篤な風邪症状が出現した場合は、胸痛、呼吸困難、失神などで代表される心臓の症状にも気をつける必要があるといえるでしょう。

 

参考文献

N Engl J Med 2018; 378:345-353

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