島に渡る、島で釣るー崎戸、生月、池島ー
崎戸編
“また釣りに来たとね”と半ば呆れたような声音で、初老の男の人が話しかけてきました。9月下旬、お気に入りの崎戸の護岸で、ちょうど4本の竿をセットした19時頃でした。
“2週間前にもお邪魔しました。大きなコロダイが釣れました。“
“ほう、よか魚の釣れたとたい。こん前も同んなじように竿を並べて釣りよった二人組のおったけど、あんたの仲間ね?”
“いえ、たぶん見知らぬ人です。”と私。ひょっとして私のブログを見てくれた人かも、と思って嬉しい気持ちになりました。
“今日も朝まで釣るとね”
“ええ、たぶん。”本当はでかい魚が釣れたら、速攻で帰りたいのですが、口にはしませんでした。
今回は針と接続する糸をポリラート10号に変更していました。ナイロンラインに換算すると20号の高強度になります。目的はフグ対策です。崎戸の海峡筋はフグも攻撃が強烈なので、フグの歯にも耐えられるしなやかさと強度の追求がひとつ、およびハリスのダメージが小さいと針に糸を結び直す手間が省け、すぐに餌をつけて投げ返せるため、餌を海底で保持できる時間を長くすることが、ふたつめの目的です。そして、餌が消滅するたびに、ひたすら打ち返せばいいのです。
20時20分にいい当たりで、コロダイ42 Cm。その後は沈黙の時間が流れ、22時40分にチヌ:38Cm。食材は確保できたので、撤収してもよかったのですが、もっと大きな魚を、と欲がでてしまうのは釣り人の性でしょう。ふたたび沈黙の2時間。私を観察していた猫様も愛想をつかして、いなくなってしまいました。そろそろ車で仮眠をとって、朝まずめにかけるか、と考えていた午前1時。右端の竿にこつこつ当りがあって、クロアナゴかな、とぼんやりみていると、突然に糸が滑走。コロダイ58 Cmを確保できました(図1)。そのまま1.5時間ほどかけて帰宅。うちの猫様、天と空が揃って玄関先まで、迎えにきてくれていました。猫様は人間に対して無関心を装っているように見えるときもありますが、実はいつも気にかけてくれている同胞なのです。
図1:コロダイ58 Cm
生月編
夕食が終わって、ぼんやりとYouTubeの釣り動画を見ていた私は、イラ、コロダイ、石鯛、チヌ、そしてスジアラまでもが乱舞する堤防周囲の海中映像に接して、思いだしました。今年の3月、平戸生月で夜の大物投げ釣りができそうな安全な堤防がないかな、と探訪していた時に心に留まった堤防。その海中映像は生月の壱部浦の堤防でした。私は外海に開いた堤防や海峡筋が好みです。心が解放されるためです。
善は急げ、というわけで、10月初旬の16時頃に、生月壱部浦に到着しました。図2は壱部浦の堤防からの遠景です(図2)。ベストの勝負をするために、岩虫を持って行きたかったのですが、手に入らず、バナメイエビとイカ餌で勝負をかけることになりました。到着時はすでにイカ釣りの人、石鯛釣りの人、ジギングをする人で賑わっていました。程なくして、石鯛釣りの人々が引き上げ、速攻で、その場所に入る私。堤防の先端から20mほど下がった処で、まず錘だけで外海向けに錘だけを投げて、海底の状況に大雑把に捉えます。正面方向は遠投しても平坦すぎる地形、近投では水深はありませんでしたが、斜面が形成されているようでした。左45度の方向は浅い海底のすぐ近くに深みがあります。砂地の範囲が広く、根がかりのリスクが小さい投げ釣りに適した海底でした。そして、正面の近投と左45度とが魚が回遊しそうなポイントと判断しました。
図2:壱部浦
日没直後に正面の竿先が深く入りましたが、ドラグを緩めていなかったので、針にかからず。夜の投げ釣りにはドラグを締める方法とドラグをゆるゆるとする方法がありますが、魚に餌を違和感なく咥えさせるためには、ドラグゆるゆるの方が有利です。もっとも、岩場が多い場所では、前者の方が根がかりや糸切断のリスクは小さくなるでしょう。21時頃に右方向の糸がすばらしい速度で滑走しましたが、またも乗らず、失意の私。
その後は小魚に餌だけを齧られる時間が過ぎ、今日はだめかも、と弱気になりかけた時でした。左45度のイカ餌の竿にかかった暴れ者の魚は、マゴチ60 Cmでした(図3)。回遊魚ではありませんが、餌が豊富な故にその場所に彼がいたのでしょう。マゴチの姿形はいかついのですが、とってもおいしい魚です。
図3:マゴチ・ランボウ
“あんたはどっから来たとね“と堤防先端でエギング以外の方法で、水イカを次々と釣り上げていた人が、帰り際に話しかけてきました。
“長崎市からです“
“何ね、近くたい”
そうかな、2.5時間くらいかかるんですけど、と心の中で反論する私。
“まあ、よか土産ができたたい」。”
“はい、超嬉しいです。”と大漁の水イカをおすそ分けしてもらえないかな、とできるだけ親和的な口調で答えましたが、邪心は叶えられませんでした。
そうです。他力本願はいけないのです。というわけで、再び速攻で、イカつり人が去った堤防先端に釣座を構えました。沖堤防がやや左方向にあり、その方向に1本、港方向の内向きに1本、右方向に1本を投げ分けました。エサはイカ餌で統一しました。最初の1匹は内向き方向のエソ。蒲鉾には美味しいのですが、川内蒲鉾を買って帰る決心をしていたので、放流。その後、すぐに糸が滑走しましたが、乗らず。午前0時に同様な当りで、上がってきた魚はハマフエフキ38 Cm。メタボの魚でした(図4)。朝まで釣る覚悟でしたが、午前1時を過ぎると数人いたイカ釣りの人もいなくなり、急に怖くなったので、妻が待つ宿に逃走し、スーパードライを飲みました。
図4:ハマフエフキ38Cm
朝、ひらど新鮮市場を覗いてみると、50Cm前後のハマフエフキが2匹、並べられていて、南方系の魚が確実に平戸にも入ってきているようでした。狙って釣れるかもしれません。
池島編
“次はどこに行きますか”
“月に1回は池島でしょう“と自問自答。
夕まずめ、まだ明るい時間帯に道糸をごりごり擦れさせながら、上がってきた魚はハマフエフキ41 Cm(図5)。あなた、ここにもいたのね、と呟く私。暗くなるとキスと思われるシャ-プな当りが続いて、擦れがかりでキス23 Cm。大きな針を用いているため、飲み込まれることはありませんが、過去に擦れがかりで27Cmのキスが釣れたこともあるため、この場所は大キスを狙える場所でもあるようです。22時までに大当りが4発あって、うち1発は竿も立たないほどでしたが、いずれも失敗。動物の気配がして、横をみるとイノシシにはあらず、ふくよかな池島猫様でした。イソフエフキ1匹を進呈しました。ともあれ、朝まずめにかけようというわけで、午前1時からふて寝。
図5:ハマフエフキ
午前2時30分から活動開始。すぐにコロダイ:42 Cmとクロホシフエダイ:33 Cm(図6)。これで、一安心です。でかいコロダイは夜明け前に釣れることが多いため、集中します。そして、午前4時30分。当たったり、静止したりとする当りがあって、竿を手に取って、伺っていると、案の定走り出しました。力強いひきで、堤防の際で道糸が堤防直下に向けて斜めに入って行きましたが、魚が角を廻らないかぎり逃げ場所はありません。水面を波立たせた魚は狙いのコロダイ。力強かったので、60Cm以上を期待しましたが、56 Cmでした(図7)。
図6:仲良し二人組
図7:暁のコロダイ
コロダイは鉄板焼き、フライ、南蛮漬け、コロバーガーでおいしく頂けます。特にフライは絶品です。妻は、わたしの腕がいいのよと、宣っていますが、確かに。そうかもしれません
