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開院1年を迎えてー総括と未来への展望ー

[2020.06.30]

7月3日でクリニックを開院してから、1年になります。時間の流れは速いものだな、と今更のように実感させられます。当院のロゴマーク(図をご参照下さい)は地域医療の中でKey的な役割を果たし、かつ、受診してくれる患者さんが安心できる診療を提供したい、という願いをこめています。その目標を実現するため、1.夜間診療、休日診療; 2.心臓病と生活習慣病の診療; 3.訪問診療をみっつの診療の柱としました。この1年間、それぞれの柱に関しては、当初の予想通りに展開していることがある一方で、予想とは異なる経過を示していること、反省すべきこと、などもあります。それぞれの柱に関しての現状を御報告したいと思います。

 

1.夜間診療と休日診療:私が長崎みなとメディカルセンターに勤務していた頃に、感じていたことがあります。運よく17時30分に病院を脱出できても自宅近くに到着する頃には、すでに18時を過ぎてしまうということです。すなわち、通常の勤務時間帯で働く人は、例え高血圧、糖尿病などの治療を要する病気があっても、なかなか病院を受診でないことは明らかでした。働く人が受診しやすい受診時間設定を、と考えて、水曜日から金曜日は20時まで、土曜日と日曜日は18時までの診療時間としました。予測に合致して、平日の18時以降に受診する患者さんの殆どは、お勤め帰りの患者さんです。意外であったことはこの時間帯には学生さんの受診も多くなります。クラブ活動あるいはご両親がとも働きなどで、18時すぎでないと受診できない中学生、高校生は思いのほか多いようです。日曜日は時に長崎市外からも受診される方がおられ、最も遠方の患者さんは上五島在住の男性です。また、日曜日は診療できる医療機関が少なくなるため、プチ救急室のようになることもあり、平日の外来とはまた違った内容になります。

 

2.心臓病と生活習慣病の診療:長崎みなとメディカルセンターでは最も多い年で、208名の急性心筋梗塞の患者さんが搬送されてきていました。世の中、胸痛の患者さんであふれている、と思っていましたが、それは錯誤でした。クリニックを受診する患者さんの中で、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など)の患者さんはさほど多くはありません。むしろ動悸、失神などの主訴で受診する方が多く、不整脈の診断とマネジメントが重要です。この1年間で心房細動や発作性上室性頻拍のため、カテーテルアブレーションの目的で紹介した患者さんも数名ほどおられます。やはり、と思ったことは、睡眠時無呼吸の患者さんが多いことです。当院では平均して月に2名ほどの患者さんにCPAP(持続気道陽圧換気)を導入しています。治療抵抗性高血圧、冠動脈疾患、および心房細動では高率に睡眠時無呼吸を合併しています。CPAPがその良好な効果(動脈硬化の進展抑制、降圧効果、心負荷の軽減)を発揮するためには、平均のCPAP装着時間:4時間以上、および4時間以上のCPAP装着日の割合:70%以上を達成する必要があります。患者さんのCPAPの装着状況は院内のPCで確認できるため、装着状況がいま一つの方には、マスクの不具合の有無、設定圧が苦痛ではないか、などを電話にて確認するようにしています。CPAPを開始してからの2週間が、CPAPを継続でいるかどうかの重要な時期であるためです。

 

3.訪問診療:訪問診療とは患者さん、御家族の求めに応じて、予定をたててご自宅、あるいはホームなどを訪問して行う診療です。たくさんの重症の心不全患者さんを治療してきた経験から、心不全の訪問診療を訪問診療の核としたい、と開院前は考えていました。しかしながら、通院が困難なほどの重症の心不全の方は殆どおられないのが現状です。また、訪問診療の時間設定と通常の外来とをいかにうまく組み合わせていくか、という点にも頭を悩ませているところです。高齢化のさらなる進行に伴って、病状だけではなく、家族のサポートの不足などの社会的環境も厳しくなると考えられるため、訪問診療の必要性はさらに高くなると思いますが、その質の向上のためには医師も含めたスタッフの拡充が不可欠かもしれません。

 

最後に私たちのクリニックは未熟な点も多いとは思いますが、初心を忘れずに患者さんのことを第一に考え、地域の病院との連携もさらに深化させ、きめの細かい診療をしていきたい、と思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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