どきっ、期外収縮のはなし
先週の長崎市は4年ぶりに積雪をもたらす雪が降り、波乱の年明けを予感させるようでした。バス、電車がとまっていたにも関わらず、当院のスタッフはみな定刻までにクリニックに到着しており、その仕事への責任感にはいたく感じ入りました。
宅には“てん”という名の家猫がいて、最近、しきりに外界への脱出を試みていたのですが、雪景色をみせ、前足に雪を触れさせたりしたところ、以後、脱出の試みをしなくなりました。外界のきびしさが小さな体にしみたのだろう、と思います。写真はてんと私、です。
寒い日が続いたためか、先週は動悸を主訴に受診される方が複数名、おられました。すべて“期外収縮”の方でした。期外収縮とは通常の間隔より早いタイミングで出現する不整脈です。期外収縮は心房性期外収縮(上室性期外収縮)と心室性期外収縮に分けられます。図には心室期外収縮を示し、幅広の波形がそれです。健常な人にホルター心電図検査を行っても、必ずといってもいい位に期外収縮は出現します。ありふれた不整脈のひとつです。
期外収縮の自覚症状は、“時にどきっ、とします”、“脈がとんでいます”、“胸が押さえられるような感じがします”、“胸がつまったような感じがします”、などさまざまです。期外収縮に一致して、咳がでる方もいます。
心室性期外収縮をみた時の私の考え方を御紹介します。検診あるいはクリニックでの心電図で心室性期外収縮を認めた場合、患者さんに症状がなく、また、診察と心電図所見より背景に心臓病がないようでしたら、これは心配のない不整脈、すなわち心臓のアクシデントには結びつかない不整脈であることを説明し、経過をみることを提案するようにしています。
症状がある場合、あるいは診察所見と心電図より何らかの心臓病が疑われる場合は次のステップの検査を行います。心エコー検査は心筋症、弁膜症、陳旧性心筋梗塞などの診断に有効です。ホルター心電図は心室性期外収縮の個数だけではなく、出現しやすい時間帯、労作との関連を観察し、また、心室頻拍などの注意を要する他の不整脈の有無を評価します。
危険な不整脈が認められず、かつ、基礎となる心臓病がある場合は、心臓病の治療が優先されます。一般的な抗不整脈薬を投与する事はありません。
基礎心疾患がない心室期外収縮の患者さんに対しても、原則的には薬物治療を行うことはありません。心配のない不整脈であることを説明し、過労、不眠、アルコールなどが誘発要因となる場合があるため、できるだけそれらを避けるように説明します。それでも症状が改善せず、患者さんが苦痛に感じているようでしたら、薬を最初は屯用で開始し、やはり、改善しない場合は予防のために毎日、内服して頂くこともあります。いったん薬物治療を開始しても、経過をみながら減量、中止できるように努めています。1日に1万個以上の期外収縮が出ている方でも、数か月後には殆ど認められなくなるような、自然軽快する人も少なからずおられるためです。