飲酒の”適量"とは、いかほど?
“酒は百薬の長”という諺があります。適量のアルコール摂取は、どんな薬よりも健康維持のために有効である、という意味で、中国の歴史書である“漢書”に由来する言葉です。健康面の効果だけではなく、いいお酒は人生を豊かにする、と私は信じています。食の愉しみを倍加させる効果があります。一方、鎌倉時代の吉田兼好は随筆“徒然草”の中で、酒に関して“百薬の長とはいへど、よろづの病はさけよりこそおれ”と過量な飲酒に関して、警鐘を鳴らしています。鎌倉時代も飲酒により絡んだり、絶叫したり、踊ったりする人がいたものと思われます。
長期間のアルコールは、種々の病気との関連が指摘されています。すなわち、認知症、うつ、肝臓病(アルコール性肝炎、肝硬変など)、膵炎、がん(食道がん、大腸がんなど)、脂質異常症(中性脂肪の増加)、痛風や糖尿病などの代謝性疾患を発病するリスクを高めます。
“適量”とされるアルコールはいかほどなのでしょうか?アルコールを代謝する能力には個人差が大きく、少量のアルコール摂取ですぐに赤くなったり、吐き気を自覚したりする人は代謝能が低下しているため、飲酒は避けたほうがいいでしょう。訓練しても慣れるわけではありません。通常のアルコール代謝能力がある人での“適量のアルコールは約20g前後”とされています。20gのアルコールはビール:500 mL、日本酒:180 mL(1合)、チューハイ:350 mLに相当します(図をご参照ください)。一方、明らかに健康被害をもたらす可能性が高い有害な飲酒量は60g以上とされ、日本酒に換算すると3合以上となります。
厚生労働省が提供するe-ヘルスネットでは飲酒のガイドラインの項があり(参考URL: 飲酒のガイドライン | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp) )、その中に示されている12の飲酒のルールを最後に御紹介しましょう。
- 飲酒は1日平均20g以下
- 女性・高齢者は少なめに
- 赤型体質も少なめに:赤型体質とは少量の飲酒で、すぐに顔が赤くなり、吐き気、動悸、眠気、頭痛などがおこる体質を指します。
- たまに飲んでも大酒しない
- 食事と一緒にゆっくりと
- 寝酒は極力控えよう:睡眠前の飲酒は睡眠の質を悪化させます。
- 週に2日は休肝日
- 薬の治療中はノーアルコール:特に睡眠薬や安定剤を飲んでいる方は、飲酒は不可です。
- 入浴・運動・仕事前はノーアルコール
- 妊娠・授乳中はノーアルコール
- 依存症者は生涯断酒
- 定期的に検診を:肝機能、脂質、血糖、尿酸などの検査。
お酒が好きな人にとっては、1, 6, 7がハードルの高い項目と思いますが、お酒による健康被害を予防するためには、頑張るしかない、といった処でしょうか。
(参考URL:お酒の適量を知る|人とお酒のイイ関係|アサヒビール (asahibeer.co.jp)より図を抜粋)