メニュー

スマートウォッチと心房細動

[2020.01.28]

心房細動という不整脈をご存じでしょうか?心臓は比較的に規則正しく収縮しています。それは右心房にある洞結節という部位で、その時々の状況に応じて(安静時、走っているときなど)、何回、収縮しなさいという命令(電気的刺激)がほぼ等しい間隔で発生しているためです。心房細動では心房のいろんな場所で命令が無秩序に、かつ、たくさん発生している状態です。1.脈拍の間隔がばらばら; 2.頻脈になりやすい→心臓への負担になる; 3.心拍出量が低下する; 4.左心房の中で血栓を形成しやすい→脳梗塞のリスクが高まる、などが心房細動の特徴です。心房細動は日常の臨床でしばしば遭遇する不整脈で、60歳以上から認められる頻度が高くなってきます。心房細動は脳梗塞の原因となりえるだけではなく、心不全の誘因ともなりえるため、直ちに治療が必要とされる場合が多い、といえます。心房細動の出現は一過性であることもあり、また、症状を伴わないこともあるため、早期の診断が難しくさせている面もあります。今回はアップルウォッチを用いて、心房細動の検出を試みた論文をご紹介しましょう。

 

対象は心房細動の既往または抗凝固薬の内服歴のない419,297名で、およそ117日と長期にわたって、アップルウォッチによる脈拍のチェックを受けています。結果の一つ:2161名(0.52%)の人が、1分間にわたる脈拍の不整を指摘されました。特に65歳以上に絞ると、3.1%の人で、脈拍の不整を検知されています。

 

脈の不整を認めた人は心電図パッチが郵送され、1週間の心電図記録を行った後に、それを返却するように求められています。二つめの結果:実際に心電図パッチを装着し、返却した人は450人で、このうち153名・34%に心房細動を認めました。このことは66%の人には心房細動を認めないというわけではなく、心房細動がたまたまその期間に出現しなかったのかもしれません。また、心電図記録中はアップルウォッチと心電図所見の比較ができます。この期間にアップルウォッチで検知された2089件の脈拍の不整のうち、実際に1489件・71%が心房細動でした。さらに重要な事実と思えたこと。脈拍の不整を検知された人はされなかった人に比べて、脳卒中、心不全、および心筋梗塞を合併する頻度がそれぞれ5倍以上、高率でした(心不全:3.2% vs. 0.2%)。

 

たとえば血圧測定の正確さという点では問題が多いようですが、技術のさらなる進歩により、スマートウォッチのような身に着けるIT機器が個人の健康に資する日も遠くないように思います。

 

参考文献

N Engl J Med 2019; 381:1909-19017

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME