熱中症に最適な飲みものは?
ざっと観察してみて、マスクを着けて往来を歩く人の頻度は、現在も80%以上です。うっかりマスクを忘れたりすると肩身の狭い思いにかられます。マスクは放熱を妨げる効果があるため、例年よりも熱中症のさらなる増加が心配されています。私も熱中症の予防のために、できるだけ水分を摂取するようにおすすめしています。“熱中症の予防のために、どんな飲み物がいいですか”―これは患者さんからしばしば受ける質問の一つです。今回は熱中症予防のため、および治療のための飲料水について、考えてみました。
熱中症予防のための飲料水:予防のための飲料水は、ジュース類のような糖度の高い飲料でなければ、ミネラルウォーター、茶、スポーツドリンクのいずれでもいい、と考えます。大切なことは外出時はペットボトルを持ち歩き、のどが渇いたと思ったとき、汗をたくさんかいたときなどに十分な水分摂取を行うことです。体格や活動度にもよりますが、飲水による1日の水分摂取のめやすは1200~2500mL/日です。ご高齢の方は口喝の自覚が乏しい方もおられますので、定期的な飲水を習慣づけたほうがよいかもしれません(例えば食事時にコップ:1.5杯、食間にコップ:1杯など)。
熱中症の治療のための飲料水:熱中症のうち頭痛、嘔吐、虚脱感、および中枢神経症状(意識障害、けいれんなど)が出現したときは、医療機関への受診が必要です。これらの症状がない熱中症(立ちくらみ、強い口渇感、大量の発汗、筋肉痛など)では、現場での応急処置が可能な場合があります。まずは涼しい場所に移動し、服をゆるめ、濡れたタオルなどで体表面を冷却します。熱中症では水分のみならず、塩分も喪失します。そのため、治療のための適切な飲料水は塩を加えた水となります。ミネラルウォーターは殆ど塩分が含まれていないため、1Lあたり1-2gの食塩を加えたほうがいいでしょう。市販のスポーツドリンクは塩分量が足りない難点があります。なお、飲水もできない状況でしたら、それは重症の熱中症と考えられますので、直ちに医療機関への搬送が必要でしょう。飲水が可能であっても、30分以内に症状が改善傾向を示さないようでしたら、病院を受診しましょう。
熱中症の発症には環境要因が重要であり、熱中症の発症時期は梅雨明けの7月中旬から8月上旬にかけてピークを示します。そして、環境要因の指標として、暑さ指数(WBGT)があります。それは1.湿度; 2.日射・輻射などの周辺の熱環境; 3.気温から算出される指標で、特に湿度に重きをおかれています。暑さ指数:28℃を超えると熱中症患者が顕著に増加することが知られています。長崎市の暑さ指数は、“長崎市 暑さ指数”で検索すると容易にたどり着くことができます。明後日、6月4日12時の暑さ指数:28℃と予測されており、それは厳重警戒レベルでした。
参考
熱中症診療ガイドライン2015: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf