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夏に多い病気ー痛風

[2020.07.14]

 “足が痛い”と問診表に書かれています。そして、足をひきずりながら、つらそうな表情で、入ってくる男性の患者さんがいたら、痛風と考えてほぼ間違いありません。痛風は主として男性に発症し(90%以上です)、その痛みは”風が吹いても痛い“と表現されるほど、かなり激しい痛みです。発汗などにより尿酸値が高くなりやすい夏季に痛風発作の頻度は高く、直近の2週間で、わたしたちのクリニックでも数名の患者さんが痛風発作で受診しています。

 

高尿酸血症と痛風:高尿酸血症とは血清尿酸値 > 7.0 mg/dLと定義されています。すべての高尿酸血症の方が痛風になるわけではありませんが、尿酸値の上昇とともに痛風の合併頻度は高くなります。尿酸が血液中に溶解できる上限値は7.0 mg/dLと考えられており、それを超えると尿酸塩の結晶が、関節内に落下、沈着し、痛風発作(痛風関節炎)の誘因となるためです。障害されやすい関節は下肢の関節で、典型例では拇指の関節が赤く腫れあがります。なお、痛風発作中の血清尿酸値は発作前より低値を示すことがあります。

 

高尿酸血症と関連する病気:痛風関節炎の他にも高尿酸血症と関連する病気があります。

  1. 高尿酸血症は慢性腎臓病の発症のリスクをたかめます。また、慢性腎臓病の患者さんの腎機能の低下を促進するように働きます。
  2. また、高血圧、心筋梗塞などの冠動脈の病気、および心不全の発症リスクを高めます。また、尿酸値が高ければ、心筋梗塞や心不全での死亡リスクを高めることも知られています。
  3. 尿路結石の頻度も増加します。痛風の治療薬のひとつである尿酸排泄薬は尿路結石を形成しやすくする側面があるため、尿アルカリ化薬などの併用を考える必要があります。

 

尿酸値を低く保つための食事:尿酸はプリン体の代謝産物ですので、食事の面ではプリン体の過剰な摂取を避けることが重要となります。

  1. プリン体を多く含む食品の過剰な摂取は高尿酸血症→痛風の一因となります。具体的にはレバー、白子、干物、クロレラ、ローヤルゼリーなどはプリン体を多く含む食品です。
  2. アルコール類も痛風のリスクを高めます。アルコール類の中でもビールが最も痛風のリスクを高めることが知られています。ビール:350~50 mL(ビールの銘柄によってプリン体含量は異なります)、日本酒:1合、ウイスキー:60mLが尿酸値への影響が小さい摂取量の上限値です。
  3. 果糖の過剰摂取は痛風のリスクを高めます。果物ジュースは控え、甘い果物は摂りすぎないことをおすすめします。
  4. 逆に乳製品、コーヒーは痛風発症のリスクを低くします。

 

痛風の薬物治療:痛風の薬物治療は痛風発作時と安定期に分けて考える必要があります。

 

発作時の治療:非ステロイド系抗炎症薬、コルヒチン、経口ステロイドにより関節炎を鎮静化させることが目標となります。初回発作の場合、尿酸降下薬の投与は発作を増悪せせることがあるため、関節炎が改善後に投与します。一方、尿酸降下薬をすでに投与中の場合は、尿酸降下薬を継続したままこれらの薬を併用します。

 

安定期の治療:血清尿酸値:6.0mg/dL以下にすることが治療の目標値です。また、痛風結節(皮下の結節)がある例では、血清尿酸値:5.0 mg/dL以下がその目標値となります。厳格な尿酸値のコントロールにより、次第に痛風結節が退縮していった患者さんを私も経験しています。尿酸降下薬は尿酸生成抑制薬と排泄促進薬に大別され、前者が頻用されています。

 

最後に私から痛風の患者さんに伝えたいことがあります。痛風の患者さんは治療からの脱落率が高い傾向があります。喉元過ぎれば熱さを忘れる、で、尿酸降下薬を中断したままにしておくと、高確率で痛風発作を再発してしまいます。食事などの生活習慣の改善を続けながら、薬物治療の必要性および継続の可否に関しては医師と相談しながらのほうがいいでしょう。

 

参考資料

日本痛風・核酸代謝ガイドライン改定委員会:高尿酸血症。痛風の治療ガイドライン(第3版). メディカルレビュー社, 2019

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