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コルヒチンがまた頑張りましたー安定型冠動脈疾患における有効性ー

[2020.09.08]

昨年の11月25日のブログに“温故知新―コルヒチンの話しー”と題して、急性心筋発症後30日以内の患者さんに対するコルヒチンの有効性について概説しました。すなわち、コルヒチン投与例では、非投与例に比べて、経過観察期間の心血管関連のイベント(心血管死、心停止からの蘇生、心筋梗塞の再発、脳卒中など)を起こすリスクを23%低下させました(1)。コルヒチンは炎症を促進させるインフラマソームの機能を阻害することにより、抗炎症効果を示すと考えられています。動脈硬化は慢性炎症の代表的な病態のひとつですので、コルヒチンによる炎症の軽減が急性心筋梗塞発症後の患者に対して、よい効果を発揮したものと考えられました。

 

急性心筋梗塞発症後、間もない患者さんは、活発な血管炎症が起こっていると考えられますが、安定型の冠動脈疾患(陳旧性心筋梗塞、安定型狭心症など)での血管壁での炎症は、より鎮静化しているものと考えられます。最近、報告された論文では、コルヒチンの有用性が安定型の冠動脈疾患でも確認されましたので、御紹介致します(2)。

 

少なくとも6月以上、安定した状態であった冠動脈疾患患者:5522例が臨床研究の対象患者さんです(コルヒチン投与:2762例、非投与:2760例)。コルヒチン投与により心血管関連の有害事象(心血管死、心筋梗塞の発症、虚血性脳卒中、冠動脈の血行再建)のリスクは約30%の低下を示しました。個別にみていくと、コルヒチンの投与により、心筋梗塞発症リスクは30%、冠血行再建を行うリスクは25%の低下を示しました。一方、懸念されることとしては、統計的な有意差には達しなかったものの、心臓以外の原因でなくなるリスクは、コルヒチン投与例では1.5倍高率でした。ふたつの群で悪性腫瘍の頻度、感染症で入院する頻度、および胃腸の不調で入院する頻度に差はなく、コルヒチン投与例で非心臓死が多くなる明確な理由は指摘しがたかった、と著者らは述べています。

 

コルヒチンによる心血管疾患の再発予防効果が安定型冠動脈疾患患者でも証明されたことがこの臨床研究の最大の眼目です。さらに、コルヒチン投与群、非投与群ともに再発予防効果が証明されたコレステロール低下薬と抗血栓薬が高率に投与されていたことから、これらの薬が手の届かなかった動脈硬化の慢性炎症にコルヒチンが介入することにより、心血管イベントを抑制した可能性が示唆されます。

 

参考文献

  1. N Engl J Med 2019; 381: 2497-2505
  2. N Engl J Med. 2020 Aug 31. doi: 10.1056/NEJMoa2021372. Online ahead of print.PMID: 32865380

 

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