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インフルエンザと新型コロナウイルス感染症

[2020.10.06]

インフルエンザの予防接種が10月1日から開始となりました。インフルエンザは冬季に流行する感染症ですが、今年の冬は新型コロナウイルス感染症(COVID-19:こちらは通年性の感染症である可能性があります)にも十分注意しながらの対応が医療機関に求められる難しい冬になりそうです。アメリカの医学雑誌JAMAに季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の簡潔なサマリーがありましたので、それぞれの特徴を下記の表に示してみました。

項目

季節性インフルエンザ

新型コロナウイルス感染症

感染経路

飛沫感染

飛沫感染が主体

感染力

-

インフルエンザより強い.

最も強い感染時期

症状の発現後

症状発現の2日前

潜伏期間

2日(1-4日)

5日(2-14日)

重篤化の危険因子

年齢:65歳以上, 2歳未満

免疫抑制状態

妊娠

病的肥満

心肺疾患, 慢性腎臓病

介護施設での居住

高齢

男性

肥満

高血圧, 糖尿病

心肺疾患, 慢性腎臓病

介護施設での居住

潜伏期間の手術

よくある症状

発熱, 頭痛, 筋肉痛, 鼻閉, 咽頭痛, 疲労感

発熱, 咳, 息切れ, 筋肉痛, 疲労感, 味覚・臭覚異常

症状のピーク

発症後3-7日

発症後2-3週間にピークがくることがある.

致死率

0.1%

0.25% - 3.0%

ワクチン

診断方法

核酸増幅法, 抗原検査

核酸増幅法, 抗原検査

抗体検査

抗ウイルス薬

ノイラミダーゼ阻害薬

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

RNAポリメラーゼ阻害薬

レムデシビル

RNAポリメラーゼ阻害薬?

 

   (JAMA. 2020 Aug 14. doi: 10.1001/jama.2020.14661. より一部、改変)

  • インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ともに無症候性の感染者からも感染しますが、その頻度は症状発現前あるいは症状発現後の患者さんからの感染よりも少ないと考えられています。
  • ノイラミダーゼ阻害薬:タミフル、イナビルなど; キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬:ゾフルーザ; RNAポリメラーゼ阻害薬:アビガン

 

診断のプロセスはまず広く網をかけて、徐々に絞り込んでいる過程にあります。したがって、発熱した患者さんが受診した際には、インフルエンザとCOVID-19がともに鑑別診断の対象疾患となります。症状の類似点が多いため、最初の診断のステップは遺伝子診断か抗原検査となります。インフルエンザの抗原検査に際しては、咽頭ぬぐい液を採取します。咽頭ぬぐい液の採取に伴って、飛沫の拡散がおこりえるため、かりに患者さんがCOVID-19であった際には、その院内感染のリスクが高くなるでしょう。当クリニックは発熱患者さんを診察する部屋を新たに作り、非発熱患者さんとの動線の分離はできています。

 

冬に備えての回答をまだ見出してはいませんが、インフルエンザの発生件数をできるだけ少なくすることが重要と思います。そのためには今まで実施してきたマスクの着用や3密を避けるなどの継続に加えて、インフルエンザワクチンの接種をできるだけたくさんの人が受けることが必要でしょう。ご高齢の方だけでなく、若い方も。

 

 

参考文献

JAMA. 2020 Aug 14. doi: 10.1001/jama.2020.14661.

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