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院長ブログ

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンー現在の知見ー(2021.02.01更新)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン接種がすでに欧米と中国では始まり、日本では2月下旬より最初は国立病院の医療従事者に対するワクチン接種が計画されています。少なくとの数年かかると見込まれていたワクチン開発が1年以内に完成したことから、特にワクチンの安全性に関する疑念が払拭できていない現状があるようにも思います。私なりに調べたところ、現在のファイザー・ビオンテック社およびモデルナ社製が開発したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに関しては、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の発症予防効果が高い、重症化リスクも低下させる、および安全性も比較的に高い、という特徴があります。一方、すべての人にとって、安全性が高い、と一概にはいえない面もあるように思います。臨床系の医学雑誌では最高峰のひとつであるNew England Journal of MedicineのHPにコロナウイルスワクチンに関するQ & Aのコーナーがあり、今回はみなさんが主として関心があるであろう事柄をピックアップして、御紹介したいと思います。

 

SARS-CoV-2ワクチンの仕組み:従来の弱毒生ワクチン(BCG、はしか、風疹など)や不活化ワクチン(日本脳炎、インフルエンザなど)と異なり、SARS-CoV-2ワクチンはウイルスの遺伝情報を基に開発されたmRNAワクチンです。mRNAは特定のたんぱく質、すなわちアミノ酸配列を決定する能力を持っています。今回のmRNAワクチンは最初のステップとして、まず接種部位近傍の組織でのマクロファージにmRNAが取り込まれます。その後、細胞質内で合成されたスパイクタンパク(コロナウイルスの表面にあります)がマクロファージの表面に提示され、抗体産生を始めとする免疫応答が呼び起こされる仕組みとなっています。mRNAは生体の酵素で分解されるため、細胞の核に侵入し、本来の遺伝情報に悪影響を与えることはないとされています。図はSARS-CoV-2のイメージ画像です。

 

ワクチンの有効性:ふたつのmRNAワクチンはともにCovid-19の発症に関して、95%程度の有効性を示しています。このことはある集団において、ワクチンをうたなかった群では100人発症すると仮定すると、ワクチンをうった群の発症人数が5人に抑えられるということを意味しています。この結果は驚異的であり、少なくとも短期的には、その効果は最も有効とされる麻疹のワクチンに匹敵するほどです。ふたつのワクチンの臨床試験での対象者は比較的に元気な、あるいは病気があってもその病気が安定している方々が対象となっていますので、病気が安定していない方、および御高齢で虚弱な方などにも同様に有効であるか、という点に関しては、まだ十分に検討されてはいません。

 

さらにワクチンはいったんCovid-19を発症しても、その重症化するリスクを低減させることが指摘されています。モデルナ社のワクチンの治験では、Covid-19を発症した人のうち30人が重症化し(1人死亡)、その30人すべてがワクチン非接種例でした。

 

ワクチンの有効性が担保される期間に関しては、ワクチンが登場してから日も浅く、明らかではありません。

 

無症状感染を減らせるか?:SARS-CoV-2の厄介な特徴は感染しても発症しない場合があり(最大40%の人が感染しても無症状)、かつ、無症状感染者も他者への感染力があるという点です。有症状者と無症状者の感染力の比較では、有症状者の方の感染力が強いとされています。有症状者はより飛沫を拡散させるため、これは当然のことといえるでしょう。モデルナ社のワクチンの治験では最初に感染していなかった人のうち1回目のワクチン接種を行って4週間後の時点での無症状感染者の頻度は、ワクチン接種群:0.1%, 非接種群(偽薬接種群):0.3%でした。このことからワクチンは無症状感染の頻度も低下させることが示唆されますが、現時点では確定的なことはいえないようです。重要なこと、それはワクチン接種を行っても個々人が行っていた感染予防対策が不要になるわけではなく、引き続きマスクの着用、3密を避けるなどの対策を継続することが必要ということを強調したいと思います。

 

安全性について:ワクチンは病原体に対する免疫を誘導する方法ですので、何らかの副反応は避けられません。特に健康に深刻な影響を与えるような副反応の合併頻度はできるだけ低率であることが求められます。SARS-CoV-2ワクチンの局所での最も多い副反応は疼痛であり、およそ80%の方に接種に伴う疼痛を認めています。また、約1%のワクチン接種者において疼痛は激しかったとのことです。他の局所の反応としては、発赤や腫脹で比較的に低率です。出現頻度の高い全身性の副反応としては、頭痛と易疲労であり、ともに50%以上の出現頻度です。39℃以上の高熱の合併は低率です。これらの副反応は2-3日で自然と改善することが多いようです。

 

米国の疾病対策予防センター(CDC)では、mRNAワクチン、ワクチンの構成成分、ポリソルベートのいずれかに対して、アナフィラキシーも含む即時型アレルギー反応を示した人はワクチン接種の禁忌としています。

 

ワクチンとアナフィラキシー:当ブログの“エピペンとアナフィラキシー”にも記述していますが、アレルギーの原因物質に曝露してから、二つ以上の臓器の症状を認める場合、あるいはショック状態になった場合に、アナフィラキシーと診断されます。血管浮腫、膨疹、下痢、腹痛、頻脈、血圧低下、呼吸困難、喘息など多彩な症状を認めます。日本で最初に導入が予測されているファイザー・ビオンテック社製のワクチンでは、アナフィラキシーの頻度が高いことが報告されました。同社のワクチン接種に伴うアナフィラキシーの出現頻度は接種人口:100万人あたり11.1例であり、一般的なワクチンのそれより10倍ほど高いのです。アナフィラキシーを合併した21例の検討では(参考文献3:JAMA)、15人(71%)が15分以内に、そして18人(86%)が30分以内にアナフィラキシーが出現しています。患者さんの背景因子に関して、21人のうち実に17人(81%)の方が過去に食物、薬、昆虫刺傷のいずれかに対するアレルギー歴を有していること、およびそのうち7人(33%)にアナフィラキシーの既往があったことは注目すべき事実と思います。現時点では米国CDCは食物などに対するアナフィラキシーの病歴を接種禁忌の対象者としてはいませんが、私見としましては、過去にアナフィラキシーの病歴がある方に関しては、ワクチン接種を慎重に検討する必要があると思われます。今回、私が参考にしたJAMAのレポートでは、ワクチン接種場所には次のことが求められるとしています。

  1. アナフィラキシーに対応できる準備をしていること。特にエピペンあるいは注射器につめたエピネフリン(アドレナリン)の準備など。気管内挿管ができる体制も必要でしょう。
  2. ワクチン接種の禁忌にあたる人、および注意が必要な人のスクリーニングを行う事。
  3. ワクチン接種後にアレルギー歴のない人で15分、深刻なアレルギー歴がある人では30分の経過観察を行う事。
  4. アナフィラキシーのサインをスタッフが理解していること。
  5. アナフィラキシーが疑われたら直ちにエピネフリンを筋注する事。そのうえで病院への搬送が必要でしょう。

 

SARS-CoV-2ワクチン接種に関して、クリニックの参加も求められる可能性が高いでしょう。その時に備えて、今から安全にワクチン接種ができる準備と整えておきたいと私は考えています。

 

参考文献

  1. N Engl J Med 2020;383(27):2603-2615
  2. N Engl J Med. 2020 Dec 30:NEJMoa2035389. doi: 10.1056/NEJMoa2035389. Online ahead of print.PMID: 33378609
  3. 2021 Jan 21. doi: 10.1001/jama.2021.0600. Online ahead of print.PMID: 3347570

 

参考URL

  1. NEJM — Covid-19 Vaccine Frequently Asked Questions (FAQ)
  2. 新型コロナワクチンについてのQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

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